複塩(読み)ふくえん(英語表記)double salt

  • 複塩 double salt

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

2種以上のが結合した形式の塩の一種で,に溶かすと個々の成分イオンに解離するものをいう。たとえばカリウムミョウバン KAl(SO4)2・12H2O は水に溶けると K+,Al3+,SO42- に解離する。これに対し,たとえば K2[PtCl4] は K+ と [PtCl4]2- に解離するので,複塩ではない。

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百科事典マイペディアの解説

2種以上の塩が一定の組成で結晶したものをいう。たとえばカーナライトKCl・MgCl2・6H2O,ミョウバンK2SO4・Al2(SO43・24H2Oなど。水溶液中では成分塩のイオンに解離する。
→関連項目

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世界大百科事典 第2版の解説

2種以上の塩が結合した形式で書ける化合物のうち,それぞれの成分イオンがそのまま存在するものをいう。たとえばKCl・MgCl2はKMgCl3とも書けるが,[MgCl3]のような錯イオンが存在するわけではなく,K,Mg2+,Clのような独立したイオンが存在すると考えられる。したがって,これは複塩であるといえる。これに対しK2[PtCl4]は,2KCl・PtCl2とも書けるが,Pt2+やCl,あるいはPtCl2などの存在は認められず,Kと錯イオン[PtCl4]2-が存在することがわかっており,これは錯塩であって複塩ではない。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

2種以上の塩が結合した形で表現される化合物(固体)のうち、各成分イオンがそれぞれのままで存在するものをいう。たとえばカーナル石KCl・MgCl2の中には、K+、Mg2+、Cl-のみがあり、[MgCl3-のような原子団(錯イオン)はないから典型的な複塩である。一方、塩化白金酸カリウムK2PtCl6は、形式上2KCl・PtCl4と書けるが、この中にはCl-、Pt4+は存在せず、K+と[PtCl62-しかないので複塩とはよべない。

 通常、複塩とよばれてきたもののなかにも、X線結晶解析の進展により構造が明らかにされると、複雑な錯イオンを含むものが、つまり錯塩であることが判明した例は少なくない。水分子の配位したアクアイオンも錯イオンに含める広義の定義を採用すると、複塩の典型とされてきたカリウムミョウバンKAl(SO4)2・12H2Oすら実は[K(OH2)6][Al(OH2)6](SO4)2の構造となっている錯塩である。したがって錯塩と複塩との区別に一線を画することは困難である。

[山崎 昶]

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 二種以上の塩が一定の割合でつくられている塩で、水にとかすとそれぞれのイオンに解離するものをいう。ミョウバンなど。〔鉱物字彙(1890)〕

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化学辞典 第2版の解説

2種類以上の塩からなる高次化合物を分類するのに,溶解したときにその成分イオンに完全に分かれるものを複塩,そうでないものを錯塩定義してきた.また,安定なものを錯塩,不安定なものを複塩としたこともあった.しかし,代表的な複塩とされていたミョウバンが,結晶解析の結果 [Al(H2O)6]3+ という錯イオンを含み,水に溶解したときも [Al(OH)(H2O)5]2+ という錯イオンになることがわかったので,上記の定義では不十分であり,結晶中に錯イオンを含まない高次化合物を複塩とする定義がもっとも妥当と思われる.すなわち,NH4HgCl3は,結晶中ではHgCl2とNH4Clとの付加物で,水に溶解したときに存在する [HgCl3] や [HgCl4]2- の錯イオンを含まない.また,ドロマイトMgCO3・CaCO3も同様である.

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世界大百科事典内の複塩の言及

【塩】より

…また,たとえばCH3COONa・CH3COOHのような塩も拡張して酸性塩といい,BiCl(OH)2のような形式のものから水分子のとれたBiClOも塩基性塩といっている。ただ1種類の単純な塩,たとえばNaClなどを単塩というのに対し,2種以上の塩が成分として含まれている,たとえばKAl(SO4)2・12H2Oのような塩は複塩といっている。また錯イオンを含む塩は錯塩という(〈錯体〉の項目参照)。…

※「複塩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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