翻訳|nitride
N3⁻イオンまたは窒素原子が3価の共有結合性原子として他の元素と結合しているとみなされる化合物。アジ化物も含めて呼ぶことがあるが,これはN3⁻イオンからなっており,本来は別種の化合物と考えるべきである。希ガスやいくつかの白金族元素を除いてほとんどすべての元素が窒化物を生成する。
化学結合の性質により次の3種に大別される。(1)イオン性窒化物 アルカリ金属,アルカリ土類金属その他いくつかの金属の窒化物がこれに属し,M3N(M=Li,Na,Cu(I)など),M3N2(M=Mg,Ca,Sr,Ba,Zn,Cdなど),M3N4(M=Thなど)などの化合物が知られている。元素間の直接の反応または金属アミドの熱分解によって生ずる。融点が高く,空気中で加熱すれば金属酸化物となる。イオン性で,水と反応してアンモニアを生ずる。(2)共有性窒化物 水素およびⅢB~ⅦB族の元素からなる化合物で,共有結合性の分子からなる揮発性の化合物(NH3,N2H4など)と,それらが重合した不揮発性の固体(BN,P2N2,P3N5,N2S2,N4S4など)がある。また窒化塩化リン((PNCl2)3,固体),窒化塩化フッ化リン(P4N4Cl2F6,液体)など3種以上の元素から構成される化合物もある。(3)侵入型化合物 窒素原子が原子価則と一致しない数で含まれている一連の化合物で,多くの遷移金属元素との化合物がこれに属する。窒素原子は金属原子のすき間を占めている。AlN,CrN,UN,VNなどのMN型(これらは一般に食塩型の結晶構造をもつ),Fe2N,Mo2NなどのM2N型,ThN2,WN2などのMN2型,Mn3N2,Co3N2,Ni3N2などのM3N2型,Fe4NなどのM4N型など,いろいろな化合物がある。一般に融点が高く(2000~3000℃),電気伝導性をもつものが多い。化学的にも安定である。金属を窒素またはアンモニア中で強熱するか,金属塩化物と窒素との混合物を白金,タングステンなどのフィラメント上で加熱,反応させて得られる。
執筆者:大瀧 仁志
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
窒素と、それよりも陽性な元素との化合物。ニトリドともいう。希ガス元素、白金族元素および金を除くすべての元素との化合物が知られる。アジ化物(N3-イオンを含む化合物)をこれに含めることもあるが、本来は通常の窒化物とは性質が異なる。
通常の窒化物は共有性窒化物、イオン性窒化物、侵入型窒化物の3種に分類できる。
(1)共有性窒化物covalent nitride 水素や第13族以下の非遷移元素との化合物で、一般に原子価に従った組成をもつ(アンモニアNH3、窒化ホウ素BN、窒化リンP2N3など)。
(2)イオン性窒化物ionic nitride アルカリ金属、アルカリ土類金属および亜鉛、カドミウムなどの化合物(窒化ナトリウムNa3N、窒化マグネシウムMg3N2など)。一般に元素間の直接反応でつくられる。多く融点の高い結晶で、水と反応してアンモニアを生ずる。
(3)侵入型窒化物interstitial nitride 遷移元素の窒化物がこれに属し、組成はかならずしも原子価に従わない(窒化チタンTiN、窒化バナジウムVN、窒化鉄Fe4Nなど)。金属原子のすきまに窒素原子が侵入した構造をとるため、正確な化学量論的な値をとらないことが多い。
[中原勝儼]
窒素が陰性成分として結合した化合物.広義には三窒化物(trinitride(1-)(別名,アジ化物)を含める.共有結合性化合物,イオン結合性化合物,侵入型化合物に分類される.【Ⅰ】共有結合性化合物:非金属の窒化物.NH3,N2H4,NCl3,S4N4など.単分子やオリゴマーと,BNのようなポリマー型のものがある.【Ⅱ】イオン結合性化合物:あまり大きくない金属元素の窒化物.たとえば,MⅠ3N(M = Li,Na,Cuなど),MⅡ3N2(M = Mg,Ca,Sr,Ba,Zn,Cdなど),MⅢN(M = Alなど).イオン結晶で,N2 と金属間の反応や金属アミドの分解などで得られる.水と反応してNH3を生じる.【Ⅲ】侵入型化合物:小さいN原子が遷移金属などの格子のすきまに規則的に配列したもの.Mに対してNの数比が小さいものや,不定比化合物となっているものもある.たとえば,MN(M = 希土類,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Uなど),M4N(M = Mn,Fe,Co,Niなど),M3N(M = V,Fe,Co,Ni,Cuなど),M2N(M = Ti,Cr,Mn,Fe,Coなど).一般に融点が高く,硬いものが多い.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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