改訂新版 世界大百科事典 「ヒ酸塩鉱物」の意味・わかりやすい解説
ヒ(砒)酸塩鉱物 (ひさんえんこうぶつ)
arsenate mineral
ヒ酸根(AsO4)3⁻を基本の化学成分として含有する塩類鉱物。無水物,酸性塩,含水物などがあり,またヒ素Asの一部をリンP,バナジウムVなどの原子で置換された種も存在する。結晶構造としてはAsO4の四面体が基本となって構造の骨組みをつくる。このため同様な四面体を基本にもつ(PO4)3⁻の塩類鉱物であるリン酸塩鉱物および(VO4)3⁻の塩類鉱物であるバナジウム酸塩鉱物と同形の関係にある鉱物が多い。
ヒ素鉱物,とくに硫化ヒ素鉱物の分解物として,このような鉱物を含有する鉱山などの酸化帯に二次鉱物として産出する場合が多い。たとえば大分県木浦鉱山より産出したスコロダイトscoroditeの一部などである。その他の産状としては比較的低温,低圧の熱水から晶出する場合があり,同じく木浦鉱山より産出したスコロダイトの美しい大晶はその例である。また含鉄冷泉より晶出する場合もあり,多量に産出する場合はヒ素資源として利用される例もある。主要な鉱物を表に示す。
執筆者:湊 秀雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報