日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒ酸」の意味・わかりやすい解説
ヒ酸
ひさん
arsenic acid
ヒ素のオキソ酸の一つ。化学式H3AsO4。オルトヒ酸ともいう。五酸化二ヒ素の水和物As2O5を水に溶かすと生成することからAs2O5そのものを無水ヒ酸ないしはヒ酸のように誤称することがある。三酸化二ヒ素または金属ヒ素を濃硝酸で酸化し濃縮する、あるいは五酸化二ヒ素As2O5を水に溶かして得られる。水溶液を30℃で結晶させると0.5水和物H3AsO4・0.5H2Oが得られる。潮解性で水に易溶。オルトリン酸よりやや弱い三塩基酸。電離定数はK1=5×10-3,K2=4×10-5,K3=6×10-10(25℃)。ヒ酸は酸性溶液で酸化剤となり、ヨウ化物イオンをヨウ素に定量的に酸化する。0.5水和物は100℃で三ヒ酸H5As3O10となり、500℃に加熱すると五酸化二ヒ素と水に分解する。殺虫剤、殺鼠(さっそ)剤として使われるほか、有機色素工業や有機および無機のヒ素製剤の原料となる。亜ヒ酸と同様有毒である。
[守永健一・中原勝儼]