改訂新版 世界大百科事典 「リン酸塩鉱物」の意味・わかりやすい解説
リン(燐)酸塩鉱物 (りんさんえんこうぶつ)
phosphate mineral
リン酸基PO43⁻を主要化学成分としてもつ鉱物群。結晶構造の基本はケイ酸塩鉱物と類似していて,P原子を中心に4個の酸素原子で構成するPO4の正四面体である。ケイ酸塩に比べるとその重合の型式は天然物の場合はより簡単である。このPの一部はSi,As,Sなどで置換される場合もある。また鉱物群としてはヒ(砒)酸塩鉱物と同類似性が多く,多くの鉱物種はそれぞれ対応するヒ酸塩鉱物と同形の関係を示す。リン酸塩鉱物ストレング石strengite Fe3⁺(PO4)・2H2Oとヒ酸塩鉱物スコロド石scorodite Fe3⁺(AsO4)・2H2Oなどはその例である。化学成分を基に分類すれば,無水酸性リン酸塩,無水リン酸塩,含水酸性リン酸塩,含水リン酸塩,無水含水酸基・ハロゲンリン酸塩,含水含水酸基・ハロゲンリン酸塩,その他のリン酸塩のようになる(表)。
生成環境としては,火成岩の共存鉱物としてマグマからの生成,接触変成作用,熱水作用,温泉水(鉱泉水を含む)からの沈殿,陸水からの沈殿(生物の作用を含む)などの場合があり,その一部としてリン灰石などのリン酸塩鉱物を主要構成鉱物とするリン鉱床を形成することもあり,リン酸資源として利用される。また海鳥の活動によりその糞などの集積によるリン酸の濃縮作用が行われグアノの構成鉱物として生成する場合もある。またまれではあるが動植物体を置換して化石の主要構成鉱物として存在することもある。
執筆者:湊 秀雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報