ヒ酸鉛(読み)ひさんなまり(その他表記)lead arsenate

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒ酸鉛」の意味・わかりやすい解説

ヒ酸鉛
ひさんなまり
lead arsenate

鉛のヒ酸塩をいう。化学式Pb3(AsO4)2。ただし通常ヒ酸鉛というときはヒ酸水素鉛(Ⅱ)PbHAsO4、式量347.1をさし、殺虫剤農薬として広く用いられる。

 酸化鉛(Ⅱ)PbOと五酸化二ヒ素As2O5との計算量混合物を熱すると、その量によって各種のヒ酸鉛、オルトヒ酸鉛Pb3(AsO4)2、メタヒ酸鉛Pb(AsO3)2および二ヒ酸鉛Pb2As2O7が得られる。どれも水に不溶の淡黄色結晶。Pb3(AsO4)2は融点1042℃、比重7.30。PbHAsO4は、ヒ酸ナトリウム水溶液に硝酸鉛(Ⅱ)を加えて得られる。無色の板状晶。水に不溶であるが、熱水中でゆっくり加水分解してヒ酸と塩基性塩となる。アルカリによって水溶性となるため、とくに消化液アルカリ性の鱗翅(りんし)目幼虫に殺虫効果があり、0.4%ぐらいの懸濁液として用いられる。

[守永健一・中原勝儼]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒ酸鉛」の意味・わかりやすい解説

ヒ酸鉛
ヒさんなまり
lead arsenate

PbHAsO4 。無色単斜晶系板状晶。比重 5.94,約 280℃で水を失いピロヒ酸塩に変る。水に不溶,硝酸およびアルカリに可溶。殺虫剤として農薬に用いられる。特に消化液がアルカリ性の鱗翅目幼虫の殺虫に適している。誤用を防ぐため青色に着色している。

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