日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビーバー石」の意味・わかりやすい解説
ビーバー石
びーばーせき
beaverite
鉛(Pb)、銅(Cu)、鉄(Fe)を主成分とする含水硫酸塩の二次鉱物。構造的に明礬石(みょうばんせき)系列に属する。1962年(昭和37)秋田県尾去沢(おさりざわ)鉱山(閉山)から発見された新鉱物尾去沢石(化学式PbCuAl2[(OH)3|SO4]2)が、発見時に本鉱のFe3+をアルミニウム(Al)で置換した新鉱物であると判明したため、研究が進行した。原記載者の田口靖郎(やすろう)はその後も検討を重ね、尾去沢鉱山から日本初の本鉱の産出を記載した。深成・浅成熱水鉱脈型あるいは黒鉱式銅・亜鉛・鉛鉱床の酸化帯に二次鉱物として生成される。初生鉱物として方鉛鉱を伴うこともある。日本では前記尾去沢鉱山のほかは、秋田県大館(おおだて)市小坂鉱山(閉山)の黒鉱鉱床の上部の酸化帯中の少量成分として確認されている。
自形は0.5ミリメートル以下のものしか確認されていないが、三方あるいは六角板状。共存鉱物として、珪(けい)くじゃく石、ブロシャン銅鉱、コニカルコ鉱、オリーブ銅鉱、洋紅石carminite(PbFe3+2[OH|AsO4]2)、α(アルファ)‐ダフト鉱α-duftite(CuPb[OH|AsO4])、コーク石corkite(PbFe3+3[(OH)6|SO4|PO4])、ヒダルゴ石hidalgoite(PbAl3[(OH)6|SO4|AsO4])、尾去沢石などがある。同定は黄色から褐色土状の外観による。条痕(じょうこん)は外観とほぼ同色。粉末は被覆力がある。一見鉄明礬石に似るが、微粉にするとこれより被覆力が強いことがわかる。命名は本鉱の原産地ホーン・シルバーHorn Silver鉱山があるカリフォルニア州ビーバーBeaver郡にちなむ。
[加藤 昭 2018年7月20日]