ビジネスユニオニズム（その他表記）business unionism

改訂新版　世界大百科事典

ビジネス・ユニオニズム
business unionism

アメリカの労働組合は，ヨーロッパの労働組合のように労働者階級の究極的解放についてのビジョンをもたず，またいかなる意味においても社会主義を志向せず，もっぱら労働者の労働諸条件を改善し，その経済的・社会的地位の向上を目ざすものが大多数である。この目的のため，アメリカの労働組合は労働組合の地位を確立し，自由な団体交渉の範囲を拡大し，労働協約を締結することに力を注ぐ。また上記目的を達成するための政治闘争にしても，独自の労働者政党を樹立したり，あるいは継続的にある政党と支持関係を結ぶようなことはせず，親労働組合的な候補者のみを支持するという無党派的院外活動を行うだけである。アメリカの労働組合は，組合運動をあたかも労働力商品取引のビジネスとみなし，意識的にその枠内に組合運動を限定している。ビジネス・ユニオニズムとは，このようなアメリカ固有の労働組合運動それ自体，あるいはその理念および組合運営のあり方の総称である。ビジネス・ユニオニズムはしばしば労使協調主義的組合運動と誤解されるが，アメリカの労働組合は労働諸条件の改善のために場合によっては長期にわたる激しいストライキを行うこともある。また無党派的院外活動にしても，労働者政党をもつ他国の労働組合に比べ政治的に影響力がとくに弱いということはいえず，むしろ強大な政治的影響力を行使している面もある。
執筆者：中村 圭介

出典　株式会社平凡社「改訂新版　世界大百科事典」

世界大百科事典（旧版）内のビジネスユニオニズムの言及

【労働組合】より

…1950年代末以降，インフレ抑制のためこれらの国では所得政策が実施されてきたが，その実効が乏しかったのは，職場レベルの賃金交渉により賃金ガイドラインがつきくずされたためである。労働組合のイデオロギーはプラグマティズムが支配的で(いわゆるビジネス･ユニオニズム)社会主義思想の影響は皆無か，あってもきわめて穏健なものである。政党との関係については英米間に大きな差異がある。…

※「ビジネスユニオニズム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典｜株式会社平凡社「世界大百科事典（旧版）」