改訂新版 世界大百科事典 「ビスマス鉱物」の意味・わかりやすい解説
ビスマス鉱物 (ビスマスこうぶつ)
bismuth mineral
ビスマスを主要成分とする鉱物。ビスマスBiは地殻中の存在度が比較的少ない金属である。したがってふつうの岩石中には独立した鉱物としては含まれていないが,特殊な条件の下では,自然ソウ(蒼)鉛Bi,輝ソウ鉛鉱Bi2S3,酸化ソウ鉛鉱Bi2O3,炭酸ソウ鉛鉱(BiO)2CO3などを作る。この中で自然ソウ鉛と輝ソウ鉛鉱が資源として重要であって,おもに接触交代鉱床と熱水性鉱床中に産出する。しかしビスマスを主要な稼行対象としている鉱山はほとんどない。資源としてはボリビアのポトシ,ラ・パスなどのスズ鉱山に産出するものが有名であり,さらにペルー,メキシコ,オーストラリア,旧ソ連の熱水鉱床に伴うものが重要である。世界の生産量は1996年に金属量で約3400tであって,その大部分は鉛・亜鉛の製錬副産物である。副産物の埋蔵量の計算は難しく,明確な埋蔵量はわからないが,1970年代末には8万t強と計算されており,その内訳は共産圏22%,オーストラリア21%,ボリビア17%などであった。現在は低融点合金,医薬品,化粧品,触媒,熱電素子などに用いられており,日本の需要は年間270t程度である。将来は低融点,熱電変換,放射性シンチレーション,電気化学的な特性を利用した需要が大きく伸びるものと考えられている。
執筆者:嶋崎 吉彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報