ビスマス(読み)びすます(英語表記)bismuth

翻訳|bismuth

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビスマス」の意味・わかりやすい解説

ビスマス
びすます
bismuth

周期表第15族に属し、窒素族元素の一つ。古く蒼鉛(そうえん)とよばれた。中世のヨーロッパではすでにその存在が知られていたが、スズ、鉛、アンチモンなどとの区別がつかないでいた。しかし、そのころから区別がつき始め、酸化ビスマス(Ⅲ)その他が顔料(がんりょう)などとして用いられていて、17世紀ごろには一般に英語でbismuth、ドイツ語でWismuthとよばれるようになっていた。18世紀になってドイツのポットJohann Heinrich Pott(1692―1777)と、スウェーデンのT・O・ベリマンの研究によって金属元素であることが確定された。自然ビスマスもまれに産出するが、輝ビスマス鉱Bi2S3やビスマス華Bi2O3として産出。普通、鉛製錬に際し、粗鉛の精製過程の副産物として得られる。精錬残渣(ざんさ)を炭素で還元してから、アルカリ融解で空気酸化し、他の金属を除き、電解精錬する。やや赤みを帯びた銀白色の金属。電気的性質は半金属で、温度が高くなると導電率が減少するが、260℃以上で増大する。空気中では安定。酸素、硫黄(いおう)、ハロゲンと直接反応して三価化合物をつくる。水では徐々に水酸化物を生じる。酸化力のない酸には侵されないが、硝酸や熱濃硫酸に溶けてビスマス(Ⅲ)塩を生じる。凝固の際体積が3~3.5%膨張する。融点が低く、鉛、スズなどと易融合金の形で、ヒューズ火災報知機など非常に広い用途に使われる。生化学的作用をもつ化合物が多く、医薬品製造に多くが使われる。化合物はアクリロニトリル製造の触媒としても利用される。熱中性子吸収断面積が小さいため原子炉冷却剤として用いられる。

[守永健一・中原勝儼]



ビスマス(データノート)
びすますでーたのーと

ビスマス
 元素記号  Bi
 原子番号  83
 原子量   208.9804
 融点    271.3℃
 沸点    1560℃
 比重    9.80(測定温度25℃)
 結晶系   三方
 元素存在度 宇宙 0.164(第72位)
          (Si106個当りの原子数)
       地殻 0.17ppm(第64位)
       海水 20×10-3μg/dm3

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ビスマス」の意味・わかりやすい解説

ビスマス
bismuth

元素記号 Bi ,原子番号 83,原子量 208.98038。周期表 15族,窒素族元素の1つ。蒼鉛ともいう。主要鉱石は輝ビスマス鉱,蒼鉛赭がある。遊離状態で産出することもある。量的には,銅および鉛鉱石から副産物として回収されるものが圧倒的に多い。単体はやや赤みのある銀白色の金属。融点 271℃,比重 9.8,硬度 2.5。凝固するとき体積が3~3.5%膨張する。電気伝導度は低く,半金属的。希硝酸,熱硫酸,濃塩酸に可溶。一般に酸化数3と5の化合物をつくり,前者のほうが安定である。融点が低いので,鉛,スズとともにローゼ合金,ニュートン合金,カドミウムの入ったウッド合金 (ヒューズ用) などの易融合金の主要材料や低融点ハンダ,高温高圧プラグ,火災報知機,消火用スプリンクラ,防火扉の高温感知部などに用いられる。中性子吸収断面積が低く,原子炉冷却材として重要。化合物は医薬品や化粧品などにも用いられる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

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