火成鉱床の一種で、熱水とよばれる地下の高温の水溶液により形成される鉱床。熱水性鉱床ともいう。通常のマグマは、多い場合には数(重量)%程度の揮発性成分(水や炭酸ガス、ハロゲンガスなど)を溶解しているが、マグマが冷却し固結してできる火成岩は、あまり揮発性成分を含むことができない。このためマグマの冷却・固結に伴って大量の揮発性物質が熱とともに放出される。それらは水を主とする流体(熱水)となり、種々の金属、非金属元素を溶解し、地表に向かって移動、冷却するにしたがって有用鉱物を沈殿させて熱水鉱床を形成する。熱水を構成している水素と酸素の同位体についての研究が進み、熱水はかならずしもマグマから放出されたものばかりではなく、地下深く入り込んだ地表水や、堆積(たいせき)物から絞り出された水などが、マグマ活動により暖められたものもあることがわかってきた。このような熱水も、マグマから放出される熱水とともに、熱水鉱床の形成に重要な役割を果たしていると考えられる。
熱水鉱床には、錫(すず)、タングステン、モリブデン、銅、亜鉛、鉛、金、銀、マンガン、アンチモン、ビスマス、水銀、ウラン、蛍石(ほたるいし)(主成分はフッ化カルシウム、用途は製鉄が主で、ほかにガラス工業用の精錬原料)など多様な金属や非金属を含む鉱物が沈殿する。地下では鉱脈鉱床、鉱染鉱床、交代鉱床などになるが、熱水が海底面上にあふれ出ると黒鉱鉱床のような塊状鉱床となるなど形態もさまざまで、規模も大小の変化に富む。金属資源としてもっとも重要なタイプの一つ。
[島崎英彦]
熱水と総称される地殻内の高温水溶液により形成される鉱床。地殻内にはさまざまな起源をもつ高温水溶液が存在し(鉱化流体),熱水作用とよばれるさまざまな地質現象を起こす。既存の岩石と反応し,これに変質作用を与えたり(熱水変質作用),岩石を溶解して交代作用を起こしたり,溶解している金属種を沈殿して熱水鉱床をつくるなどがそれである。熱水はマグマ活動により発生すると考えられており,熱水鉱床は正マグマ鉱床とともに火成鉱床の代表といえる。有用な金属種が熱水から沈殿する理由は,温度降下などの物理的原因のほか,熱水のpH,酸化還元状態,濃度などの化学的条件の変化があげられる。金,銀,銅,亜鉛,鉛,水銀,アンチモン,スズ,タングステン,モリブデン,マンガン,蛍石など多種の金属・非金属の鉱床をつくる。規模は大小さまざまで,地下で形成される場合には周囲の母岩に変質を与え,鉱脈,交代鉱床,鉱染鉱床などの形態をとる。また熱水が地表(主として海底面上)にあふれ出した場合には,黒鉱などの塊状硫化物鉱床を形成する。
執筆者:島崎 英彦
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