改訂新版 世界大百科事典 「ピナンガ」の意味・わかりやすい解説
ピナンガ
pinanga palm
Pinanga
東洋の熱帯に見られる小型のヤシ科植物の属名。幹は細く,通直で単生または群生し,環紋を有する。葉は羽状全裂で長さ0.3~2m。羽片は通常数少なく,対生または互生し,多くは下部が広く羽軸に沿着し,形は線形,線状鎌形または長方形,先端または前半の羽片は切頭歯状。肉穂花序は最下部の葉鞘(ようしよう)の基部から出て下垂性,通常単一分岐し,各枝は穂状。仏焰苞(ぶつえんほう)は1個。花は雌雄同株。果実は卵形または楕円形,橙色または赤紫色に熟し,長さ1~2.5cm。インド,東南アジア,マレーシアに115種を産し,林床や林縁に多い。属名Pinangaはマレー地方の現地名pinangにもとづく。小型で葉に斑紋のあるきれいな種も多く,観賞用に栽植され,日本にも数種が導入されている。熱帯ではP.dicksonii Bl.等の果実はビンロウの果実の代用とされる。茎の若芽は食用(カンボジアではP.duperreana Pierreを,フィリピン等ではP.insignis Becc.)とし,いろいろな種で材を細裂したものおよび葉でバスケットを編む。細い幹をそのままステッキにすることもある。若い葉の繊維を織物に用いる(セレベスではP.punicea Merr.)。
執筆者:初島 住彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報