改訂新版 世界大百科事典 「ピュー族」の意味・わかりやすい解説
ピュー族 (ピューぞく)
Pyu
チベット・ビルマ語派に属する言語を使っていたビルマ(現,ミャンマー)の古代民族。イラワジ川流域のプロームを中心に小さな城砦国家を築いて住んでいた。城砦跡は今も数ヵ所残っている。遺跡はいずれも煉瓦造りの長大な城壁で取り囲まれ,外側に濠がめぐっていた。遺跡の出土品からいくつかの共通性がわかる。その一つは骨壺埋葬制で,ピュー族は死者を荼毘に付した後,遺骨を石甕や素焼きの壺に入れて埋葬していた。これはピュー族固有の風習で,ビルマ族には伝承されていない。第2はピュー・コインの存在である。直径2~3cm大の円形をした銀製のもので,両面に舎利塔,法螺貝,金剛杵,卍,日月,旭光などの文様が刻印されている。さまざまな解釈が成り立つが,出土枚数の多さや分布状況から通貨であった可能性も考えられる。第3はピュー文字の碑銘で,パーリ語経典や偈頌を記した金板,舎利容器や石碑,石甕などに記されている。文字の形は古代インドのカダンバ文字に類似し,今までに解読された結果からいうと,ピュー語はチベット・ビルマ語派の言語の一つである。仏・菩薩像やヒンドゥー神像などの出土品から考えると,ピュー族の間では仏教とヒンドゥー教の重層信仰が行われていたらしい。ピュー族は漢籍では驃,剽,僄などと記されている。9世紀の中ごろ南詔に攻撃されて滅亡したとされる。
執筆者:大野 徹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報