改訂新版 世界大百科事典 「フィンランド大公国」の意味・わかりやすい解説
フィンランド大公国 (フィンランドたいこうこく)
フィンランド大公によって統治されていた国,すなわち20世紀初めにロシアから独立する以前のフィンランドを指す。フィンランド語でSuomen suuriruhtinaskunta。最初にこの名称を正式に用いたのはスウェーデン王ヨハン3世で,1581年のことであった。リトアニア大公国と連合していたポーランド,およびモスクワ大公国と並ぶ勢力であることを誇示するためであった。その後,通常はスウェーデン王がフィンランド大公を兼ねたが,1809年,フィンランド大公国の支配はスウェーデンからロシアに移り,それ以降はロシア皇帝がフィンランド大公を兼ねた。時のロシア皇帝アレクサンドル1世は,同年3月,ポルボーにフィンランド議会を召集し,それまでフィンランド人が憲法の下で享受していた権利と自由を,その後も保障することを公言した。それに対し,フィンランド議会は国民を代表して,アレクサンドル1世をフィンランド大公と認め,これに忠誠を誓った。この保障は,以後の歴代ロシア皇帝によって忠実に履行されたわけではないが,この保障と忠誠が,ロシア帝国とフィンランド大公国の関係の基本となった。これ以降ロシア帝国は,皇帝ニコライ1世に代表されるように,大公国の自治を奪おうと企てたが,フィンランド人は弾圧に抵抗して憲法を守った。1917年3月,ロシアで起こった二月革命によって,ロシア皇帝のフィンランド支配は終わり,同年の十月革命後の12月6日,フィンランドは独立を宣言した。
執筆者:荻島 崇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報