改訂新版 世界大百科事典 「フェートギャラント」の意味・わかりやすい解説
フェート・ギャラント
fêtes galantes[フランス]
〈艶(えん)なる宴〉の意であるが,特定の美術ジャンルをさして使われる語で,〈雅宴画〉などと訳される。ワトーがアカデミー会員候補作品として提出した作品《シテール(キュテラ)島の巡礼》が,当時のアカデミーのどの部門にも属さなかったため,この名称が新たに案出された。野外に集い,会話,音楽,ダンスなどを楽しむ人々の情景を描く作品にあたえられる名称である。ワトーの作品の多くが,このジャンルに属し,それらは半ばはロココ時代の風俗を反映し,半ばは夢想的,演劇的な情景である。同ジャンルは,ワトーの後継者,友人たち,すなわちランクレ,パテール,コアペル,さらにブーシェ,フラゴナールらによって描かれただけではなく,ロココ期の室内装飾,陶器の絵付けのモティーフとしても流行した。また,ゴヤの初期のタピスリー下絵にもその反映が見られ,ロマン派の作品にもある。
なお美術以外では,ベルレーヌの詩集《フェート・ギャラント》(1869)と,同詩集に基づくドビュッシーの歌曲集(1903-04)が知られる。
執筆者:中山 公男
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