日本大百科全書(ニッポニカ) 「ランクレ」の意味・わかりやすい解説
ランクレ
らんくれ
Nicolas Lancret
(1690―1743)
フランスの画家。パリに生まれ、同地に没。最初歴史画家を志し、ローマ賞を目ざすが果たせず、1712~13年ごろクロード・ジローの工房で働き始め、彼からコメディア・デラルテをはじめとする舞台芸術、そして風俗画への関心を受け継ぐ。19年「フェート・ギャラント(雅画)」の画家として、ワトーに1年遅れてアカデミー会員となる。ほとんどパリにあって、ワトーに追随した画風の作品を制作、人物像にワトーの哀感を帯びた高い精神性は感じられないとはいえ、時代の雰囲気をより直截(ちょくせつ)に伝えている。代表作に『饗宴(きょうえん)』(1735、シャンティイ、コンデ美術館)、『四季』連作(1738ころ、ルーブル美術館)などがある。ランクレの絵画作品は1720年代の終わりから銅版画によって大量に複製され、名声が高まった。また色チョークによる素描も多く残している。
[上村清雄]