改訂新版 世界大百科事典 の解説
フォート・ウィリアム・カレッジ
Fort William College
イギリスのインド植民地支配の中心地カルカッタに,東インド会社の官吏養成のため,当時のインド総督ウェルズリー卿の発案で作られた教育機関。1800年創立,54年解消。英語,ギリシア語,ラテン語の古典,自然,社会科学,各国の法律やヒンドゥー教,イスラムの法典,インド,ヨーロッパの歴史,アラビア語,ペルシア語,サンスクリット,インドの地方諸言語など,その教育内容は広範にわたった。このカレッジがインドの文化復興,ことにこれまで顧みられることの少なかった地方語の発展に果たした役割は大きい。なかでも1801年に開設されたベンガル語学部では,セランポール伝道団のウィリアム・ケアリーWilliam Carey(1761-1834)が中心となってベンガル語の文法書や辞書を編纂し,日常会話や読物の教科書をつくってベンガル語近代散文の基礎を据えたほか,中世の詩人オージャーの《ラーマーヤナ》翻案など古典作品の発掘,出版にも力を注いだ。
執筆者:大西 正幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報