日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベンガル語」の意味・わかりやすい解説
ベンガル語
べんがるご
Bengali
インド・ヨーロッパ語族インド・イラン語派に属するアーリア諸語の一つで、アッサム語、オリア語などとともに東部語群を形成する。現在バングラデシュの国語となっており、インド西ベンガル州、マニプル州、トリプラ州等の公用語でもあり、約1億5000万人の使用人口をもつ。ベンガル語には文語形と口語形の二形式があるが、コルカタ(カルカッタ)市に定住するベンガル人中流家庭の日常会話体が口語形式の、またアジア人最初のノーベル文学賞受賞者であるラベンドラナート・タゴール(1913年受賞)の作品の文章体が文語形式の標準形と考えられている。
ベンガル文字は、他のインド諸言語の文字と同様ブラーフミー文字の系統に属し、一字が一母音、ないし子音(群)と母音の結合を表す音節文字である。ベンガル語発達の歴史をみると、まずマーガディー・アパブランシャ語がアバハッタ語の影響を受けつつ8世紀中葉に初期ベンガル語として成立し、13世紀から18世紀にかけて成長する中期ベンガル語の過程を経て、19世紀以降現代ベンガル語の形態をとるに至っている。形成期にはムンダ諸語やドラビダ諸語の影響を受け、成長の過程ではサンスクリット語、アラビア語、ペルシア語、ポルトガル語、英語などから多くの語彙を借用している。現存最古のベンガル語文献は10世紀中葉の宗教詩『チャリア・ギータ』で、初期・中期の文献もみな韻文で書かれ、散文が初めて現れるのは17世紀後半になってからである。
[奈良 毅]
『S. K. ChatterjiThe Origin and Development of the Bengali Language, 3 vols. (1970, George Allen & Unwin Ltd., London)』