化学辞典 第2版 「フッ化臭素」の解説
フッ化臭素
フッカシュウソ
bromine fluoride
【Ⅰ】一フッ化一臭素(bromine monofluoride):BrF(98.90).臭素とフッ素とを直接反応させ,-150 ℃ に冷却すると得られる.室温では赤褐色の気体.Br-F分子.Br-F約1.76 Å.融点-33 ℃,沸点-20 ℃.きわめて不安定で,BrF3,BrF5,Br2 に分解する.[CAS 13863-59-7]【Ⅱ】三フッ化臭素(bromine trifluoride):BrF3(136.90).臭素とフッ素とを反応させ,15~50 ℃ に冷却すると得られる.無色,または淡黄色の発煙する液体.平面T字形構造.密度2.80 g cm-3(25 ℃).Br-F約1.81 Å(両側二方向),1.72 Å(中央1個).融点9 ℃,沸点126 ℃.多くの金属,非金属と反応する.水と反応し,次亜臭素酸HBrO,臭素酸HBrO3,フッ化水素HFを生成する.ガラスやケイ酸塩とも反応する.木,紙,ある種の有機物に触れると発火する.フッ素化剤,フッ化物の溶媒などに用いられる.眼や皮膚をおかし,有毒.[CAS 7787-71-5]【Ⅲ】五フッ化臭素(bromine pentafluoride):BrF5(174.89).150 ℃ 以上で,臭素と過剰のフッ素とを反応させるか,25 ℃ でKBrと F2 とを反応させるか,または200 ℃ でBrF3と F2 とを反応させると得られる.-120 ℃ では,斜方晶系結晶.室温では無色の液体(気体,固体も無色).分子は,Br原子のまわりに5個のF原子が正方すい型に配置している.密度2.46 g cm-3.Br-F約1.76~1.82 Å(底面内),1.68 Å(頂点).∠F-Br-F約80.5~86.5°.融点-61 ℃,沸点41 ℃.460 ℃ まで分解しない.反応性が大きく,多くの金属や非金属の単体,および化合物と反応してフッ化物をつくる.水とはげしく反応してHFとBrOF3になる.乾いていれば石英は侵さない.眼や皮膚をおかす.有毒.[CAS 7789-30-2]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報