翻訳|quartz
重要な造岩鉱物の一種。長石類に次いで産出量が多い。石英には高温型と低温型がある。前者は高温石英high-quartzまたはβ石英(ベータせきえい)beta-quartzとよばれ、1気圧では573~870℃で安定である。六方晶系に属し、柱面がほとんどなく、等価な六つの錐(すい)面からなる両錐状結晶として産することが多い。おもに流紋岩、石英斑(はん)岩など高温でできた酸性火山岩中にみられる。しかし高温石英も常温常圧に置かれると、外形のみそのままで、結晶構造は低温型に転移する。この転移は、高温型と低温型の結晶構造にわずかな違いしかないので容易におこる。したがって現在われわれが手にとってみる石英は鉱物学的にはすべて低温型のものである。低温型は低温石英low-quartzまたはα石英(アルファせきえい)alpha-quartzとよぶ。三方晶系に属するため、6個の錐面は等価でなく、2種類の錐面が一つ置きに並ぶ。また普通、柱面が長く伸びている。結晶形の明らかなものを水晶とよぶ。普通、塊状ないし粒状で、花崗(かこう)岩、流紋岩など酸性火成岩、片麻岩、石英片岩など広域変成岩、砂岩など堆積(たいせき)岩、それらを切る脈と産状は広範囲に及ぶ。色は普通は無色であるが、種々着色したものや異種鉱物を含有するものにいろいろな名称がつけられている。玉髄、めのう、碧玉(へきぎょく)、虎目石(とらめいし)、血石(けっせき)、アベンチュリン、クリソプレースなどのほか、紅、紫、青、黄、黒、煙、鉄などの冠詞をつけてよぶ。鉄石英は微細な赤鉄鉱や針鉄鉱が分散して赤色もしくは黄褐色にみえる。
石英はガラス原料をはじめ各種窯業原料として重要である。また上質のものは装飾品としたり、物性を利用したりすることも多い。石英の多形(同じ化学組成で原子配列が異なるもの)としては、鱗珪(りんけい)石、クリストバル石、モガン石、コース石、スティショバイトがある。クォーツの英名の由来はあまり明瞭(めいりょう)にわかっていないが、一説にはサクソン語のquerklufterzからきているとされている。このことばは16世紀の初期に鉱山で使われていたもので、金属鉱物が濃集している部分にある交差した石英脈を意味したらしい。ほかに古代スラブ語説、古代高地ゲルマン語説などがある。
[松原 聰]
『葛生伸著『半導体・光産業をかげで支える石英ガラスの世界』(1995・工業調査会)』
化学組成SiO2。石英には低温型石英(α-石英)と高温型石英(β-石英)があり,1気圧の圧力のもとで低温型は約573℃まで安定で,高温型は約573℃から870℃まで安定である。天然に産する石英はすべて低温型である。火山岩のなかには高温型の結晶形を示すものもあるが,これも現在は低温型に転移している。なお,石英の結晶を一般に水晶と呼ぶ。
三方晶系。低温型石英は一般に六角柱状で両端には錐面が発達している。双晶にはドーフィネ式やブラジル式双晶,また傾斜双晶としては日本式双晶がある。色は種々のものがある。透明ないし半透明,ガラス光沢。モース硬度7,比重2.56。条痕は白色。結晶構造中でSiO4四面体の配列が右手系か左手系かによって,石英にも右手系と左手系がある(結晶構造)。これは結晶の外形,食像などとも対応している。高温型と低温型石英の間の転移は,Si-O結合の切断や原子の入換えなしに,原子位置のわずかな変位だけで行われる。石英には多くの変種があるが,これらの変種は結晶の粒度によって二大別される。(1)粗粒な結晶として産するもの。(a)アメシスト(紫水晶) 青紫色ないし赤紫色。(b)黄水晶 黄色。(c)煙水晶 褐色,灰色から黒色。(d)バラ石英 ピンク色ないし赤色。(2)微結晶として産するもの。この変種は種々のカルセドニー(玉髄)からなり,メノウなどがその一例である。石英は最も広くしかも多量に存在する鉱物で,多くの火成岩,変成岩,堆積岩の重要な構成鉱物である。また,固化していない砂,礫の中にも多量に存在する。
→水晶
六方晶系。高温型石英は一般に六方両錐で柱面が発達しない。白色,灰色,無色。透明からほとんど不透明まで。ガラス光沢。モース硬度7,比重2.53(600℃)。主として流紋岩,石英粗面岩,石英安山岩など酸性火山岩の斑晶として,あるいはこれらの岩石の晶洞中に産出する。
執筆者:津末 昭生
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
SiO2.透明な結晶を水晶という.575 ℃ で,低温型のα石英から高温型のβ石英に転移する.前者は三方晶系で,空間群はP 3121とP 3221,格子定数 a0 = 0.4913,c0 = 0.5405 nm.密度2.65 g cm-3.後者は六方晶系で,P 6222とP 6422,a0 = 0.501,c0 = 0.546 nm,密度2.53 g cm-3 である.いずれの場合も対称面をまったく欠き,左水晶と右水晶とがあり,α-β間の転移では解消しない.結晶面の性質や,旋光性・圧電気などもこれらの性質を反映している.硬度6.ガラス光沢で透明ないし半透明,無色,白色,黄色(黄水晶),紫ないし紅紫色(紫水晶),灰~淡黒色(煙水晶),淡紅色(紅水晶)などを呈する.ペグマタイト中から大きな水晶の結晶として産出するのをはじめ,石英脈として多く産出する.長石類,雲母類などともに,花こう岩,石英はん岩など岩石学的に酸性岩といわれるものを構成する主要な造岩鉱物である.石英にはへき開がなく,共軸双晶のブラジル式双晶,ドフィネ式双晶と傾斜軸双晶の日本式双晶など各種の双晶がある.アメジスト(紫水晶)が宝石として用いられるほか,準宝石および装飾用,光学用,発振器用,窯業原料など広い用途がある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ある原子Aに対してそれに隣接する他の原子の配置は,X1とX2とではまったく同じで,Aから隔たっている原子の配置に至ってX2はX1とは異なるといった状態がよく見られる。その典型的な例は石英の低温相αと高温相βである。Si原子1個が正四面体の中心に位置し,その正四面体の4頂点のそれぞれにはO原子が位置し,これらの四面体が頂点を共有してつながっている点においてはこれら両相の結晶構造は共通しているが,α‐石英の結晶構造は図のa(図にはSi原子のみを示す)のものであるのに対し,β‐石英のそれは図のcのものである。…
…また合成により結晶および無定形,ガラス状などの二酸化ケイ素が得られる。結晶状態には石英,リンケイ石,クリストバライトの三つの変態がある。石英(水晶,メノウ,玉髄,フリントなどを含む)は無色または不純物により紫,褐色その他に着色している。…
※「石英」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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