おかし(読み)オカシ

デジタル大辞泉 「おかし」の意味・読み・例文・類語

おかし〔をかし〕

平安時代、「もののあわれ」と並ぶ美的理念の一。枕草子の主調美で、知的興味をそそられる感覚的、直観的な明るい情趣。室町時代以降は、こっけいの意で用いられ、狂言俳諧狂歌などの笑い文学底流となる。→おかしい

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「おかし」の意味・読み・例文・類語

おかしをかし

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 形容詞「おかし」の名詞化 ) 笑うべきこと。滑稽。戯れ。
    1. [初出の実例]「をかしをすれども道に合ふぞ」(出典:史記抄(1477)一七)
  3. 猿楽、間(あい)狂言などの滑稽な劇。また、それを演ずる人。
    1. [初出の実例]「抑 をかしと者、かならず数人のわらひどめく事」(出典:習道書(1430))

おか・しをかし

  1. 〘 形容詞シク活用 〙おかしい

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「おかし」の意味・わかりやすい解説

おかし

日本文学における美的理念の一つ。「をかし」と表記した。古語。本来「をこ」からきていて,不調和の美であるが,平安時代には,中心的な美的理念「あはれ (→あわれ ) 」に同化されて,調和美となり,優美に近くなった。しかし,「あはれ」の哀感美に対し,観照の美であり,感覚美であり,趣向の美でもあり,明朗美の性質も有する。作品でいえば,『源氏物語』が「あはれ」中心であるのに対し,『枕草子』は「をかし」を中心とし,さまざまな事物に対する批評の言葉にも「をかし」が多数用いられているだけでなく,「世の中のをかしき事」を選び出して記すと作者自身が述べている。平安~鎌倉時代に盛んに行われた歌合判詞や歌論においても,「をかし」は王朝的ななかに理知的,趣向的面をもつ美を表わす語として用いられている。時代が下るにつれて,「をかし」の意味は変化し,室町時代の世阿弥能楽論では,狂言方の滑稽を主とする芸や役者そのものをも「をかし」と呼んでいる。江戸時代になると,俳諧の一部や,川柳,狂歌,滑稽本などに,近世的な卑俗美としての「をかし」が独立のものとして現れるにいたった。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android