日本大百科全書(ニッポニカ) 「フラマン人」の意味・わかりやすい解説
フラマン人
ふらまんじん
Fleming
ベルギー北部を中心にオランダ、フランスなど北海沿岸に住む民族。ベルギー国内の人口は約588万(1996)。もとはフランドル地方に住む人々をさしたが、現在では主としてベルギーの北部に住み、オランダ語の一方言であるフラマン語を話す人々を総称して用いる。この地方はラテン文化とゲルマン文化の接合部にあたり、歴史上数々の衝突と融合が繰り返された。ベルギーはその複雑な歴史を象徴しており、北部のフラマン人と、約300万人を数えるフランス語系のワロン語を話すワロン人との間に、政治、民族、言語をめぐっての対立が絶えなかった。ワロン人は数は少ないが、フランスを背景に長く政治的優位を保ち、それに対するフラマン人の教育、言語の平等を求める運動が19世紀以来強まっていた。ベルギーの首都ブリュッセルは地理的、文化的にその対立の中央に位置していた。このような両者の拮抗(きっこう)が続いた結果、1993年、ベルギーは言語別の三つの「共同体」と、三つの「地域」からなる連邦国家に移行した。
フラマン人はルネサンス以来、美術、文学、音楽に優れた作品を残しており、また繊維工業の中心的担い手でもある。宗教は大多数が熱心なカトリック信者である。彼らはフランス、ベルギー、オランダの各国で支配的文化に併合されながらもその独自性を保持している。
[片多 順]