フランス大統領選挙(読み)ふらんすだいとうりょうせんきょ(にせんじゅうなな)

知恵蔵 「フランス大統領選挙」の解説

フランス大統領選挙(2017)

欧米で極右ポピュリズムが台頭する中、大きな注目を集めた2017年のフランス大統領選挙。5月7日の決選投票で、政治組織アン・マルシェ!(前進)代表のエマニュエル・マクロンが約66%の票を獲得し、極右政党・国民戦線(FN)の党首マリーヌ・ルペンを破った。マクロンは前政権(社会党オランド政権)で経済大臣を務めたが、右派でも左派でもない中道路線を強調し、歴代最年少39歳の若さで第25代大統領に就任した。
4月23日に実施された第1回投票は、有力候補4人の混戦となった。決選投票に進んだマクロンは得票率約24%、ルペンは約21%と僅差で、急進左派のジャンリュック・メランションと中道右派フランソワ・フィヨンも共に約20%と善戦した。とりわけ、最低賃金の引き上げなどを公約に掲げた左翼党メランションは若年層の支持を集め、事前の予想を上回る票を獲得した。一方、最大野党・共和党所属で首相経験もあるフィヨンは当初、最有力視されていが、夫人への不正給与疑惑で失速した。与党・社会党のブノワ・アモンも大差を付けられ敗退。これまで政権を担ってきた共和党と社会党の二大政党の候補者が決戦投票に進めないという異例の事態となった。ド・ゴール大統領に始まる第5共和政(1958年~)の下では、初めてのことである。
なお、最も注目を集めた自国第一主義のルペンは、EU離脱や移民制限などを公約に掲げ、国内経済の立て直しや雇用回復を訴えた。決選投票で敗れたものの、中・低所得者層から女性、二大政党の旧支持者までの票を集め、大躍進。危険視されていた極右政党が既成の政治に不満を持つ国民の受け皿になるまで成長したことは、国内外に大きな動揺をもたらした。

(大迫秀樹 フリー編集者/2017年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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