化学辞典 第2版 の解説
フルオロジルコニウム(Ⅳ)酸塩
フルオロジルコニウムサンエン
fluorozirconate(Ⅳ)
ZrⅣのフルオロ錯体は,きわめて種類が多い.錯イオンで示すと,ZrF62-,ZrF73-,ZrF84-,ZrF5-,Zr2F102-,Zr2F124-,Zr2F135-,Zr2F146-,そのほかZr6F317-などが知られている.計算量のZrF4と各金属のフッ化物MFを,水溶液中または溶融して反応させると得られる.また,エタノール中でZrBr4とMFとの反応による方法も知られている.【Ⅰ】MⅠ2ZrF6:Rb塩,Cs塩は六方晶系で,正八面体型のZrF62-を含む.Cs塩でZr-F約2.04 Å.K塩は斜方晶系で,十二面体型のZrF8が,両隣と1稜2個のFを共有してつながった鎖状構造である.Zr-F約2.19~2.26 Å(架橋),2.12~2.15 Å(末端).K塩は,純粋な金属Zrの製造原料にも用いられる.Na塩はZrF7(五角両すい型)の頂点共有型構造である.アンモニウム塩は二面冠三方柱型八配位のZrF8の三角形の一辺共有でつながった鎖状構造である.[CAS 16923-95-8:K2ZrF6]【Ⅱ】MⅠ3ZrF7:(NH4)3ZrF7はK塩,Cs塩と同型で,立方晶系で,一面冠八面体型七配位のZrF73-を含む.Na塩は正方晶系である.なお,イオンの構造が五角両すい型のものもある.【Ⅲ】MⅠ4ZrF8:たとえば,Li6(BeF4)[ZrF8]は正方晶系で,正四面体型のBeF4とひずんだ十二面体型の[ZrF8]が含まれる.Zr-F約2.05,2.16 Å.一方,[Cu(H2O)6]2[ZrF8]は緑色の単斜晶系結晶で,[ZrF8]は正方アンチプリズム型である.Zr-F約2.05~2.11 Å.【Ⅳ】MⅠZrF5:アルカリ金属塩(Na,K)およびアンモニウム塩などが知られているが,次の【Ⅴ】の二量体などのポリマーも含まれていると思われる.【Ⅴ】二量体:たとえば,K2[Cu(H2O)6][Zr2F12]は,2個の五角両すい型のZrF7が赤道面の1稜2個のF原子を共有した二量体である.一方,Na5Zr2F13は一冠三角柱型で,2個のZrF7が冠のF原子を共有してつながった形をもつ.また,[Cu(H2O)6][Cu2(H2O)10][Zr2F14]では,正方アンチプリズム型の2個のZrF8が,1稜2個のF原子を共有し,その稜を含む両者の面が同一平面となってつながっている.【Ⅵ】たとえば,Na7Zr6F31は,正方アンチプリズム型のZrF8が6個縮合した形である.アルカリ金属などの塩の多くは無色の結晶で,水に可溶.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報