化学辞典 第2版 「フルオロ硫酸」の解説
フルオロ硫酸
フルオロリュウサン
fluorosulfuric acid
HSO3F(100.07).フルオロスルホン酸ともいう.氷冷した液状の三酸化硫黄にフッ化水素気体を通じるか,または発煙硫酸とフッ化水素カリウムKHF2との反応で生じる.酸は,硫酸のOH基1個をF原子で置き換えた形の分子構造.塩は,正四面体型の [SO3F]- を含む.S-O約1.43 Å,S-F約1.56 Å.∠O-S-O約113°,∠O-S-F約106°.室温では無色で,やや粘性のある液体.融点-87.3 ℃,沸点162.6 ℃.密度1.74 g cm-3(20 ℃).900 ℃ まで安定である.純粋で乾燥空気中ではガラスを侵さない.湿気のある空気中では発煙する.水とはげしく反応するが,加水分解は不完全で可逆的である.
HSO3F + H2O H2SO4 + HF
HFやKFなどを溶かす.Sと反応してSO2とHFになる.アルカリ金属塩は,アルカリ金属フッ化物とSO3との反応で得られるが,安定で加水分解しにくい.フッ素化剤に用いられるほか,オレフィンのフッ化水素化(hydrofluorination),アルキル化,アシル化,縮合,重合などの触媒,ピリジン誘導体の製造,石油工業製品の製造などに用いられる.また,HSO3FとSbF3の1:1混合溶液は超強酸とよばれ,カルボカチオンの安定な溶液をつくる.皮膚を刺激する.有毒.[CAS 7789-21-1]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報