オレウム(oleum)ともいう.97~98% 濃硫酸に多量の三酸化硫黄を吸収させたもの.大気中の水分と三酸化硫黄蒸気から生じる硫酸霧の白煙を発生するのでこの名がある.H2SO4・xSO3と記される過剰量xの値によって融点がかわり,xが増加するにつれ粘性が増す.発煙硫酸中では次のような平衡が成立する.
H2SO4 + SO3 H2S2O7
H2SO4 + H2S2O7 H3SO4+ + HS2O7-
したがって,硫酸と三酸化硫黄を等モル混合すると主成分は二硫酸(ピロ硫酸)H2S2O7である.接触式硫酸製造法において,第一吸収塔で三酸化硫黄を吸収させることによって30% 以下のものをつくる.これ以上のものは,発煙硫酸を蒸留して得られる三酸化硫黄と20% 発煙硫酸とを混合してつくる.発煙硫酸中のSO3の求電子性を利用した強力なスルホン化剤,脱水剤であり,各種スルホン酸,ニトロ化合物製造用,不飽和炭化水素の吸収剤に用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
濃硫酸に多量の三酸化硫黄(いおう)SO3を吸収させたもの。SO3の含有量の低いものは粘性のある油状の液体で、オレウムoleumともよばれる。つねに三酸化硫黄の蒸気を発して白煙を出すのでこの名がある。接触式硫酸製造法において、三酸化硫黄の溶解量(遊離SO3という)が30%以下のものがつくられる(これを水で希釈して濃硫酸としている)。SO3濃度が高くなると固体となる。おもな成分は二硫酸H2S2O7のようなポリ硫酸である。SO3 25%の比重1.9262(15℃)。融点-11℃(SO3 20%)、-0.6℃(SO3 25%)、15.2℃(SO3 30%)。水に触れると強く発熱する。ほとんどの金属を侵す。皮膚に触れると重症のやけどを生じるので取扱い注意。クロロ硫酸の原料として染料、火薬、薬品の原料に用いられる。
[守永健一・中原勝儼]
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… 2H2SO4⇄H2S2O7+H2O H2SO4+H2O⇄H3O++HSO4- H2SO4+H2S2O7⇄H3SO4++HS2O7- 2H2SO4⇄H3SO4++HSO4-最後の式に示す自己解離の平衡は大きく左に偏っている。濃硫酸に三酸化硫黄を溶かし込んだものは発煙硫酸と呼ばれ,当モルの混合物とした場合の主成分は二硫酸H2S2O7である。硫酸は強い二塩基酸であり希硫酸(希水溶液)中では第1段の解離はほとんど完全であり第2段の解離定数はK2=2×10-2(18℃)である。…
※「発煙硫酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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