発煙硫酸(読み)ハツエンリュウサン

デジタル大辞泉 「発煙硫酸」の意味・読み・例文・類語

はつえん‐りゅうさん〔‐リウサン〕【発煙硫酸】

濃硫酸に多量の三酸化硫黄を吸収させたもの。粘度の高い油状液体常温で三酸化硫黄の白煙を出す。接触法による硫酸製造の際に得られ、染料火薬薬品などの原料とする。

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精選版 日本国語大辞典 「発煙硫酸」の意味・読み・例文・類語

はつえん‐りゅうさん‥リウサン【発煙硫酸】

  1. 〘 名詞 〙 九七~九八パーセントの濃硫酸に多量の三酸化硫黄を吸収させたもの。空気中で盛んに三酸化硫黄の蒸気を発する。染料・火薬の原料や酸化剤などに用いられる。オレウム。

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化学辞典 第2版 「発煙硫酸」の解説

発煙硫酸
ハツエンリュウサン
fuming sulfuric acid

オレウム(oleum)ともいう.97~98% 濃硫酸に多量の三酸化硫黄を吸収させたもの.大気中の水分と三酸化硫黄蒸気から生じる硫酸霧の白煙を発生するのでこの名がある.H2SO4xSO3と記される過剰量xの値によって融点がかわり,xが増加するにつれ粘性が増す.発煙硫酸中では次のような平衡が成立する.

H2SO4 + SO3 H2S2O7

H2SO4 + H2S2O7 H3SO4 + HS2O7

したがって,硫酸と三酸化硫黄を等モル混合すると主成分は二硫酸(ピロ硫酸)H2S2O7である.接触式硫酸製造法において,第一吸収塔で三酸化硫黄を吸収させることによって30% 以下のものをつくる.これ以上のものは,発煙硫酸を蒸留して得られる三酸化硫黄と20% 発煙硫酸とを混合してつくる.発煙硫酸中のSO3の求電子性を利用した強力なスルホン化剤,脱水剤であり,各種スルホン酸,ニトロ化合物製造用,不飽和炭化水素の吸収剤に用いられる.

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「発煙硫酸」の意味・わかりやすい解説

発煙硫酸
はつえんりゅうさん
fuming sulfuric acid

濃硫酸に多量の三酸化硫黄(いおう)SO3を吸収させたもの。SO3の含有量の低いものは粘性のある油状の液体で、オレウムoleumともよばれる。つねに三酸化硫黄の蒸気を発して白煙を出すのでこの名がある。接触式硫酸製造法において、三酸化硫黄の溶解量(遊離SO3という)が30%以下のものがつくられる(これを水で希釈して濃硫酸としている)。SO3濃度が高くなると固体となる。おもな成分は二硫酸H2S2O7のようなポリ硫酸である。SO3 25%の比重1.9262(15℃)。融点-11℃(SO3 20%)、-0.6℃(SO3 25%)、15.2℃(SO3 30%)。水に触れると強く発熱する。ほとんどの金属を侵す。皮膚に触れると重症やけどを生じるので取扱い注意クロロ硫酸の原料として染料、火薬、薬品の原料に用いられる。

[守永健一・中原勝儼]

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百科事典マイペディア 「発煙硫酸」の意味・わかりやすい解説

発煙硫酸【はつえんりゅうさん】

97〜98%の濃硫酸に三酸化硫黄SO3を吸収させたもの。空気中ではSO3ガスを発生して白煙を生ずる。SO3含有量がおよそ40〜60%または70%以上のものは常温で無色の固体,それ以外のものは常温で液体。通常25%程度のもの(油状で粘度が高い)がつくられる。強力なスルホン化剤,脱水剤で,火薬,染料,各種有機薬品の製造に利用。
→関連項目クニーチ硫酸

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「発煙硫酸」の意味・わかりやすい解説

発煙硫酸
はつえんりゅうさん
fuming sulfuric acid

濃硫酸に多量の三酸化硫黄 SO3 を吸収させたもの。 SO3 の蒸気を発し,これが大気中で反応して白煙となる。 SO3 含量 40~60%および 70%以上では固体。含量の少ないものは無色粘稠な液体。腐食性が激しく,取扱いには十分の注意を要する。希硝酸から濃硝酸をつくるのに多量に使われ,またスルホン化剤,脱水剤,酸化剤として用いられる。火薬,染料などの製造に重要である。

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改訂新版 世界大百科事典 「発煙硫酸」の意味・わかりやすい解説

発煙硫酸 (はつえんりゅうさん)

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世界大百科事典(旧版)内の発煙硫酸の言及

【硫酸】より

… 2H2SO4⇄H2S2O7+H2O H2SO4+H2O⇄H3O+HSO4 H2SO4+H2S2O7⇄H3SO4+HS2O7 2H2SO4⇄H3SO4+HSO4最後の式に示す自己解離の平衡は大きく左に偏っている。濃硫酸に三酸化硫黄を溶かし込んだものは発煙硫酸と呼ばれ,当モルの混合物とした場合の主成分は二硫酸H2S2O7である。硫酸は強い二塩基酸であり希硫酸(希水溶液)中では第1段の解離はほとんど完全であり第2段の解離定数はK2=2×10-2(18℃)である。…

※「発煙硫酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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