化学辞典 第2版 「フロンティア電子」の解説
フロンティア電子
フロンティアデンシ
frontier electron
π電子系の基底状態で,最高のπ軌道を占める電子.共役化合物の置換反応をその遷移状態に注目して論じるために,福井謙一ら(1952年)によって提案され発展させられたフロンティア電子理論のなかで,はじめて名づけられた.反応性を決定する因子としては,遷移状態におけるπ電子の非局在化エネルギーによる安定化があげられるが,これにもっとも大きく寄与する電子がフロンティア電子であると考える.したがって,注目する分子内で求電子反応,求核反応,ラジカル反応の起こる位置は,それぞれ次のように考えて決定される.
(1)求電子反応:基底状態における2個のフロンティア電子の密度が最大となる位置.
(2)求核反応:基底状態の最低空軌道に新しく入る2個のフロンティア電子の密度が最大になる位置.
(3)ラジカル反応:(1)の1個のフロンティア電子と(2)の1個のフロンティア電子の密度の和が最大となる位置.
以上のように,反応はフロンティア電子密度の大きい位置で起こる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報