日本大百科全書(ニッポニカ) 「置換反応」の意味・わかりやすい解説
置換反応
ちかんはんのう
replacement reaction
分子やイオンなどの中のある原子団や原子が、ほかの原子や原子団(置換基)によって置き換えられる反応を一括して置換反応という。
AB+C―→AC+B
有機化学では、置換反応を反応試薬により分類して、アニオノイド試薬の攻撃によりおこる置換を求核置換反応(SN型)、カチオノイドの攻撃によりおこる置換を求電子置換反応(SE型)、遊離基(フリーラジカル)による置換をラジカル置換反応(SR型)とよんでいる。Sは置換substitutionの頭文字をとった記号である。有機化合物の合成によく用いられるフリーデル‐クラフツ反応、ニトロ化、ハロゲン化などの重要な反応はほとんど置換反応である。同位体原子による置換、たとえばジュウテリウムやトリチウムによる置換は、とくに同位体交換という。
無機化合物の世界では、同位体交換反応isotopic exchange reactionのほかに、錯体における配位子の交換が重要である。配位子が水分子で置換される反応はアクア化(以前はアコ化といった)、逆に配位している水分子が陰イオンで置換される反応はアネーションとよばれている。
ときとして、複分解反応を置換反応とよぶことがあるが、現在ではこのような使用例は珍しくなった。
[山崎 昶]