改訂新版 世界大百科事典 「ブタ丹毒」の意味・わかりやすい解説
ブタ(豚)丹毒 (ぶたたんどく)
swine erysipelas
ブタの急性の家畜法定伝染病。一般的には特徴的な菱形の皮膚炎をともなう敗血症,および慢性の非化膿性の関節炎と肉芽性の心内膜炎が示される。ブタ丹毒菌Erysipelothrix rhusiopathiaeが原因菌であるが,この菌による感染はシチメンチョウをはじめ,人やウシ,ウマにもみられる。菌株の毒力によって感染力に差がある。急性型のものでは潜伏期は1~7日で,高熱,脱力,食欲廃絶,まれに嘔吐することもある。下顎および腹部の皮膚に赤色から紫色の変色があり,しばしば心内膜炎を後遺する。じんましん型のものは菱形疹が頸部,肩甲部,四肢の外側,臀部などの体表に現れる。はじめ瀰漫(びまん)性であるが,しだいに限局,扁平に隆起して色も淡赤→暗赤→紫色になる。慢性型では関節炎,心内膜炎などがみられる。有効な血清やワクチンが防疫対策として用いられている。また,治療法としては免疫血清と,ペニシリンが有効である。
執筆者:本好 茂一
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