シチメンチョウ(読み)しちめんちょう(その他表記)turkey

翻訳|turkey

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シチメンチョウ」の意味・わかりやすい解説

シチメンチョウ
しちめんちょう / 七面鳥
turkey
[学] Meleagris gallopavo

鳥綱キジ目キジ科の鳥。家禽(かきん)化されたものがクリスマスの食卓にのせられるので有名である。1属1種で、野生種は北アメリカの北緯20~40度の地域に分布し、ヒョウモンシチメンチョウAgriocharis ocellataとともにシチメンチョウ亜科をなす。生息環境としては、草原や明るい林を好み、地上で雑草の種子、キイチゴ類、各種のどんぐりをおもに食べ、昆虫類もとる。外敵に対しては、走って茂みの中に隠れ、飛ぶことは少ない。夜は樹上に集まって眠る。繁殖は一夫多妻制。1羽の雄が数羽の雌を集め、ゴロゴロと鳴きながら、尾を広げ体を膨らませてディスプレーをする。雌は地上に浅いくぼみを掘って巣とし、8~17個(平均11個)の卵を産む。抱卵日数は28日。キジ科のほかの鳥と同じように、雛(ひな)は早成性で綿毛が生えそろって生まれ、数時間後には歩き出し、2週間後には翼も伸びて、枝の上で眠るようになる。繁殖期以外は雌雄別々の群れをつくって生活する。全長は、雄約120センチメートル、雌約90センチメートル。体重は、雄が5.8~6.8キログラム、雌が3.6~4.6キログラムぐらいが普通であるが、雄の最大のものは15キログラムを超える。羽色は、暗褐色暗緑色とからなり、金属光沢がある。胸から房状の剛毛が垂れており、雄では25センチメートルに達する。頭と頸(くび)は羽毛がなく、裸出した皮膚にはいぼ状の突起があって、赤、青、紫などに変化するところから、この和名がついたと思われる。上の嘴(くちばし)の付け根に、数センチメートルの長さの肉質の突起がある。大きさと色の違いから、7亜種に分けられる。猟鳥として長い間狩られたので、現在の分布はかなり狭くなりつつあるが、局地的にはまだ多数生息しているので、アメリカのいくつかの州ではいまだに狩猟鳥とされている。天敵としては、アメリカワシミミズクとイヌワシコヨーテがあるが、狩猟によって殺されるもののほうが多いと推定されており、人工増殖したものを放鳥する努力もなされている。

 ユカタン半島産のヒョウモンシチメンチョウは一回り小形で、雄の体重は約5キログラム、雌はその半分ぐらいしかない。羽色は緑色が強く、光沢がある。尾羽にはクジャクの飾り羽に似た丸い目玉模様があり、ディスプレーのときに目だつ。林縁や原野にすみ、かつてはごく普通にみられたが、現在では非常に少なくなっている。家禽化はされていない。

[竹下信雄]

品種

飼養の歴史は古く、ニュー・メキシコ州の先住民ズニやメキシコのアステカ人によって飼われ、肉は食用と宗教上の供物として、羽は装飾用として使われていた。1510年代に、アステカ人の飼っていたものがスペインに持ち込まれ、食用として増殖されるようになり、この系統のものが北アメリカに逆移入され広く飼われるようになった。しかし、品種改良とともに、大規模に飼われるようになったのは1930年代以降である。代表的な品種としては、原種に近い外形をもつB・B・ブロンズ、小形で白い羽色のベルツビルスモールホワイト、発育が早いミニターキーがある。品種改良の方向としては、成長が早く肉づきがよいことと、肉用として処理がたやすいように羽毛が少ないことが目標になっている。

[竹下信雄]

食品

シチメンチョウは生後5~6か月で約4キログラムに育つ。成熟したものでは10~15キログラム以上にもなり、食鳥のなかではもっとも大形。食用としては5~6か月のころがいちばん味がよく、若鳥であるので、肉は非常に柔らかい。ニワトリよりもはるかに大きく、またニワトリと違い胸の肉が多い。去勢した雄がとくによい。雄の肉のほうが雌に比べて柔らかく、雄雌の見分け方は、雄の胸には黒い胸毛がついており、羽毛を引いてもここだけは残されているので容易に区別がつく。シチメンチョウは冬に向かって脂がのり、12月に入ると身が引き締まり、クリスマスのころがもっとも味がよくなる。栄養成分は鶏肉とよく似ている。タンパク質は約24%である。欧米ではクリスマス、感謝祭などにシチメンチョウは欠かせないが、結婚式やその他お祝い料理にもよく使われる。調理法としては主としてローストにする。

河野友美・山口米子]

ローストターキー

家庭で焼く大きさは3~4キログラムのものが適当である。羽毛を除き、ニワトリと同様に内臓を抜き、腹腔(ふくこう)の中に塩水を通してきれいに洗う。これを手羽と足を折り曲げて麻紐(あさひも)で堅く縛り、両足先をくくり、形を整えたうえ、足に油を塗った紙を巻いて焦がさないようにしてから、全体に油を塗り、香辛料、野菜とともにオーブンで焼く。焼き時間は3~4キログラムのもので1時間30分を要する。焼き上がったら糸を外し、胸骨から肋骨(ろっこつ)に沿ってまっすぐ包丁を入れ、ももの内側にも包丁を入れてから、片身ずつ斜めにそぐようにして人数分に切り分ける。3~4キログラムくらいの大きさで約10人分がとれる。切り分けたものを元の姿どおりにのせ、足にチャップ花(紙飾り)をつけ、付け合せを周囲に盛る。焼き汁でつくったソースとクランベリーコケモモ)ソースを添える。詰め物をするときは、食パンにみじん切りのタマネギパセリセロリ、それに卵、バターなどをあわせたものを、内臓を除いたあたりに詰めて焼く。

 七面鳥料理には、このほかブレゼ(蒸し煮)やクリーム煮などがある。

[河野友美・山口米子]

民俗

北アメリカの南西部に住む先住民を中心にいち早く家禽化が行われたシチメンチョウは、神話や信仰のなかで特別な意義を与えられている。ジカリテ人などのアパッチ系先住民の神話では、シチメンチョウは、農耕にかかわり、穀物などを人間にもたらす情深い人物として登場している。またジカリテ人では、シチメンチョウがタバコを人間にもたらし、巻きたばこの作り方を教えたという。羽毛は外套(がいとう)や毛布などの実用品に使われるほか、祈祷(きとう)者の杖(つえ)につけて呪(まじな)いにするなど、呪術(じゅじゅつ)的な目的にも用いられた。

[小島瓔

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改訂新版 世界大百科事典 「シチメンチョウ」の意味・わかりやすい解説

シチメンチョウ (七面鳥)
turkey
Meleagris gallopavo

キジ目キジ科。アメリカに野生するヤセイシチメンチョウをメキシコのインディアンが家禽(かきん)化した肉用の家禽。頭部から頸部にかけて皮膚が裸出し,興奮するとこの部分の色彩が赤,青などに変化するのでこの名がある。スペイン人の手により16世紀の初頭にヨーロッパへもたらされた。英名をターキー(〈トルコの〉の意)と呼ぶのは,それ以前にアフリカからトルコ経由でヨーロッパへ渡来したホロホロチョウと混同されたためといわれている。アメリカにはヨーロッパから逆輸入されて改良が進められた。本種の肉は他の食肉に比べタンパク質が高く脂肪,水分の含量が少ない。古くからクリスマス,感謝祭の食卓に欠かせぬものであったが,近年その高タンパク低カロリーの食肉という特性が評価され,アメリカではハムその他の加工品にも用いられるようになった。

 おもな品種には次のようなものがある。(1)ブロンズ種Bronze 野生種と同じ金属光沢のある羽色をもつ。成体重は雄17kg,雌10kgと大型で,おもに加工用に用いられ,26週齢の雄12~14kg,雌8kgぐらいのときに出荷される。(2)ラージ・ホワイト種Large White 羽色は白色。ブロンズ種の突然変異で生まれた白色個体から作られた。白色オランダ種も改良に用いられている。成体重は雄17kg,雌10kg。(3)白色オランダ種White Holland 羽色は白色,成体重は雄15kg,雌8kgぐらい。(4)ベルツビル・スモール・ホワイト種Beltsville Small White 1941年アメリカ農務省ベルツビル研究所で作出された白色の小型種。体重は雄10kg,雌6kg。家庭用のローストまたはフライに適する大きさの3~5kg(14~17週齢)で出荷される。(5)その他 ナラガンセット種Narragansett,ブルボン・レッド種Bourbon Redなどがある。
執筆者: 野生のものは,19世紀初めまではカナダ南部,アメリカおよびメキシコに広く分布し,とくにアメリカの東部と中部ではいたるところにいたが,大量の捕獲と森林の伐採のために減少し,現在はアメリカ南部とメキシコのごく一部に生息しているだけである。雄は全長約1.2m,羽毛は暗褐色で強い金属光沢を帯びる。雌は金属光沢が少なく,雄よりかなり小さい。繁殖期以外は雄と雌はそれぞれ別の群れをつくり,昼間は地上で餌をあさり,夜は木にとまって寝る。植物質のものを主食とし,とくにどんぐり類を好むが,昆虫やカエルも食べる。放浪癖があり,ときどき大きな群れで餌の豊富なところに移動する。繁殖期には雌はひとりで地上に巣をつくる。雄は尾羽を扇状に広げて求愛のディスプレーを行い,ふつう数羽の雌と交尾する。卵の数は通常8~15である。抱卵や雛の世話も雌が行う。なお近縁のヒョウモンシチメンチョウは中央アメリカの開けた森林にすむ。
執筆者:

肉はやや繊細な味わいに欠けるが,味,肉色ともに鶏肉に似て調理もほぼこれに準じる。ロースト,冷製,蒸し煮とする。前胸部に栗,レーズン,鶏肝臓,パン粉などをまぜた詰物をし,首皮で包んでローストすることもある。胸肉を薄切りして焼汁とクランベリーソースを添える。腿肉はかたいので料理の格式としては下がり,手羽肉とともに刻んでコロッケにしたりする。肝臓,砂肝など内臓も鶏と同様に扱う。
執筆者:


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シチメンチョウ」の意味・わかりやすい解説

シチメンチョウ
Meleagris gallopavo; wild turkey

キジ目キジ科。全長雄 120cm,雌60cm。体全体が金属光沢のある緑,赤銅色,赤褐色からなる。頭から頸にかけて皮膚が裸出しているが,この部分は赤,青,紫色などに変化し,和名のシチメンチョウの由来となっている。繁殖期になると雄はと尾を広げてディスプレイを行ない,数羽の雌と交尾する。草原や疎林に生息し,地上で種子,根,昆虫類などを食べる。野生種は北アメリカに広く分布していたが,生息地の減少に伴い多くの場所から姿を消した。しかし,今日では数十年にわたる保護にともなって生息数がかなり増えている。ヨーロッパでも 16世紀末までには食肉用に広く飼育され,B.B.ブロンズ,ベルツビル・スモール・ホワイトなどの品種がつくられている。近年は愛玩専用に飼育される種もある。

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百科事典マイペディア 「シチメンチョウ」の意味・わかりやすい解説

シチメンチョウ(七面鳥)【シチメンチョウ】

キジ目キジ科の鳥。北米原産で野生種は草原や林にすみ,翼長50cmほど。アメリカで家禽化され,16世紀にヨーロッパへもたらされた。肉用家禽として欧米では広く飼育され,ことに収穫祭やクリスマスの料理などによく用いられる。成熟したものでは10〜15kgに達する。頭部には肉瘤(にくりゅう)が,頸(けい)部には肉垂が発達し,これらが鮮紅〜白色に変化する(七面鳥の名はこれに由来)。雌は肉瘤や肉垂をもたず,体も小さい。羽色は品種によって異なり,ブロンズ種(シチメンチョウ中最大),ラージ・ホワイト種,ナラガンセット種などがある。野生のものは減少し,今日ではアメリカの南部とメキシコに生息する。

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栄養・生化学辞典 「シチメンチョウ」の解説

シチメンチョウ

 [Meleagris gallopavo].アメリカ大陸に原生していた鳥類の一つ.家禽化されて生産されている.

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世界大百科事典(旧版)内のシチメンチョウの言及

【家禽】より

…おもな家禽とその祖先である野生種は次のとおりである。 (1)キジ科 ニワトリ(セキショクヤケイなどをインドで約5000年前に馴化(じゆんか)),ウズラ(野生のウズラを日本で江戸時代に馴化),シチメンチョウ(ヤセイシチメンチョウを北アメリカで原住民が馴化し,16世紀にヨーロッパへ紹介),ホロホロチョウ(野生のホロホロチョウを西アフリカで馴化)。(2)ガンカモ科 アヒル(マガモを北半球の各地で馴化),ガチョウ(サカツラガンを中国で,ハイイロガンをエジプトで馴化,ヨーロッパで改良),バリケン(ノバリケンをペルーで馴化)。…

※「シチメンチョウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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