日本大百科全書(ニッポニカ) 「プトン」の意味・わかりやすい解説
プトン
ぷとん
Bu‐ston
(1290―1364)
チベット仏教の学問僧。プトン・リンチェントプBu‐ston rin chen grub、またはプトン・カチェBu‐ston kha cheともよばれる。顕密両教の教理に精通した大学者で、とくに『時輪(じりん)タントラ』に詳しく、また彼による仏教タントラ4分類法は今日でも用いられる。シガツェ近郊のシャル寺院の住職となり、ここでチベット大蔵経の整備と分類を行い、目録を編纂(へんさん)した。彼の博識は仏教教理に限られずに論理、歴史、文法、天文、暦法、医学に及び、著作は200編余りに上る。とくに大蔵経目録の前編として付された『仏教伝通縁起』(1322作)は「プトンの仏教史」と称され、チベット仏教史研究の貴重な資料である。
[川崎信定 2017年4月18日]
『Eugène Obermiller tr.History of Buddhism (chos-byung) by Bu-ston,2vols.(1931,1932,Heidelberg;repr.1964, Tokyo)』▽『Lokesh Chandra ed.The Collected Works of Bu-ston, Śatapiaka Series No.64(1959,1971, New Delhi)』