化学辞典 第2版 「プリセッションカメラ」の解説
プリセッションカメラ
プリセッションカメラ
precession camera
単結晶によるX線回折像を記録するカメラの一つで,M.J. Buergerが考案,実用化した.結晶の逆格子面を変形させないで記録できるので,タンパク質のように大きい格子定数をもつ結晶の研究には欠かせないカメラである.またMo Kα などの短波長のX線を使う実験などにもよく用いられる.ワイセンベルクのX線カメラでは入射X線に垂直な回転軸と直交する逆格子面の写真が得られるが,プリセッションカメラではその軸に平行な逆格子面が記録できるので,二つのカメラが相補的に使われる場合も多い.プリセッションカメラの特長をあげると,
(1)逆格子面がひずまないので指数付けと対称の判定が容易である,
(2)ミクロホトメーターなどを使って強度測定を機械化しやすいこと.
欠点は,
(3)高次の反射が記録できない,また,
(4)多重フィルム法が使えないので,強度比の大きい多くの反射強度を1回の撮影で精度よく測定することができないことである.
一方,ワイセンベルクカメラでは,(1),(2)に問題があるが,(3),(4)は容易に行いうる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報