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プレカリア(その他表記)precaria[ラテン]

改訂新版 世界大百科事典 「プレカリア」の意味・わかりやすい解説

プレカリア
precaria[ラテン]

プレケース(請願)にもとづいて譲渡される恩恵的土地貸与および貸与地をさす。ローマ時代の,私人間の随時取消し可能なプレカリウムprecariumとちがい,フランク時代および中世のプレカリアは,主として教会による俗人への土地貸与であり,保有者は,一般に低額の年地代を支払って,終身または親子2代にわたる用益権を認められており(のち世襲保有),契約的性格が強い。中世のプレカリアには次の3種類がある。荒蕪地を畑やブドウ畑に変えることを条件に,教会が所領の一部を直接貸与するもの(プレカリア・ダータ),土地所有者が所有地をいったん教会に寄進し,あらためてそれを保有地として借り戻すもの(プレカリア・オブラタ),借り戻された寄進地のほかに教会領の一部を貸与されるもの(プレカリア・レムネラトリア)。中世において,最も普及したのはプレカリア・オブラタであり,教会領の増大は,このプレカリア寄進に負うところが大きい。
ベネフィキウム
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プレカリア」の意味・わかりやすい解説

プレカリア
precarium

借地手続の一つ。語源は preces (請願) 。古代ローマで発生,フランク王国時代,西ヨーロッパで行われ,教会などの大所領の集積役割を果した。本来,地代支払いと引替えに不定期で土地を借用するものであったが,5年,終身,世襲と長期化するとともに,農民が自分の所有地を有力者に寄進したうえであらためて借受ける慣行が一般化した。

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世界大百科事典(旧版)内のプレカリアの言及

【カロリング朝】より

…したがって王の常備軍を事実上構成していたのは,いわゆる〈カロリング封建制〉において,託身(コンメンダティオ)と忠誠fidelitasとによって主君dominusたる王の家臣となり,恩貸地(ベネフィキウム)を賦与されていた〈王の家臣vassi dominici〉層であったと考えられる。トゥール・ポアティエの戦(732)の直後から,カール・マルテルやピピン3世は,教会・修道院所領に,〈王の命令による賃貸地(プレカリア)precaria verbo regis〉を設定し,これを恩貸地とした。恩貸地はしだいに王直領地を侵食し,規模も14マンスから数十マンスの荘園に及ぶことすらあったが,カール2世以後はこれを家臣の自有地alodiumに変えて,忠誠をつなぎとめようとした。…

【封建制度】より

…借地権設定の方法が用いられたのは,次の事情によった。すなわち,アルヌルフ家(のちのカロリング王家)はメロビング朝の宮宰として広大な教会領を自由に利用することができたので,彼らは国王の名において教会に命令し,教会領を自分の家士に貸与させ(〈国王の命令によるプレカリア〉),これによって膨大な家士軍を形成することができた。当時すでに教会財産不可譲の原則(教会財産は相当の対価なしに失われてはならないという原則)が成立していたために,所有権自体は教会に留保して,借地権を設定するという方法がとられたのである。…

※「プレカリア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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