改訂新版 世界大百科事典 「プレカリア」の意味・わかりやすい解説
プレカリア
precaria[ラテン]
プレケース(請願)にもとづいて譲渡される恩恵的土地貸与および貸与地をさす。ローマ時代の,私人間の随時取消し可能なプレカリウムprecariumとちがい,フランク時代および中世のプレカリアは,主として教会による俗人への土地貸与であり,保有者は,一般に低額の年地代を支払って,終身または親子2代にわたる用益権を認められており(のち世襲保有),契約的性格が強い。中世のプレカリアには次の3種類がある。荒蕪地を畑やブドウ畑に変えることを条件に,教会が所領の一部を直接貸与するもの(プレカリア・ダータ),土地所有者が所有地をいったん教会に寄進し,あらためてそれを保有地として借り戻すもの(プレカリア・オブラタ),借り戻された寄進地のほかに教会領の一部を貸与されるもの(プレカリア・レムネラトリア)。中世において,最も普及したのはプレカリア・オブラタであり,教会領の増大は,このプレカリア寄進に負うところが大きい。
→ベネフィキウム
執筆者:関口 寅彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報