翻訳|petition
国や地方自治体が所管する事務について一定の措置を行う、または行わないよう希望や意見を伝える行為。請願権は、日本国憲法で基本的人権の一つとして保障され、誰でも行うことができる。地方議会への請願には議会議員の紹介が必要となる。提出後は、議会は所管の委員会に付託。審査の結果が本会議に報告され、議会としての採択、不採択の決定がされる。
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出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
人民が国家または地方公共団体に対して意見を具申すること。封建国家においても国王や領主に対する請願権はある程度認められており,1689年のイギリスの権利章典Bill of Rightsでは国王に対する請願権を確認している。議会制が発達する以前において,請願は民衆の政治的要求の唯一のはけ口であった。フランス革命の端緒はチュイルリー宮殿に押しかけた民衆の国王への請願にあった。このため1791年のフランス憲法では請願権を基本的人権の一つとして認めたものの,ブルジョアジーは民衆の反抗を恐れて,個人の記名の必要と集団的請願の禁止という規制を設けている。同様の制限は今日の多くの憲法にも付されている。請願には請願者自身の権利や利益が侵害された場合にその救済を求めて行うものと,国家の統治上のある事柄について要求するものとがある。しかし,請願は請願者の要望を国家に対して具申することであって,国家機関による審理と裁定を要求する権利ではない(この点で,裁判所に対して行う〈訴訟〉とは異なる)。しかし,民主化の促進とともに請願の数は増えつづけ,その政治的役割は大きくないものの,一定の政治的牽制の役を果たしている。
日本の特質として,請願の日本的表現としての〈陳情〉がある。陳情には,地元に中央政府の財政支出を誘導するため,市町村長や同議員,県知事や県議会議員が行う地方自治体を単位とするものと,米価決定時に大挙して米価審議会に押しかけて政策に圧力を加える農業協同組合のような,多種多様な組織によるものとがある。陳情の目的は地元法案,業界法案の成立と予算の配分にあるが,地元議員の理解と支持や関係部門への紹介と応援を得ることをとおして,地元議員との接触交流を繰り返すことにもある。このように,自分に有利な措置をとったり,手心を加えてもらったりするために,公式・非公式に行われる陳情は,具体的利害関係について,直接に圧力を加えるために,より効果的である。
執筆者:都築 勉
日本国憲法は,それを,外国人,法人,未成年者,在監者等を含むすべての人々に権利として保障する(16条)。この請願権は,法律的には,請願者が単に意見を述べるだけの行為にとどまる。したがって,請願を受けた機関は,それを受理し,職務の執行において参考にしなくてはならないが,その請願内容が当該機関を法的に拘束するものではない。しかし,憲法で請願を保障する趣旨からして,請願はできるだけ尊重されなければならない。請願法(1947公布)が,請願は,〈官公署において,これを受理し誠実に処理しなければならない〉(5条)とし,国会の各議院や地方議会の場合には,それを審査し,採択したものについては関係機関に送付することとしている(国会法80,81条,地方自治法125条)のもそのためである。
憲法は〈損害の救済,公務員の罷免,法律,命令又は規則の制定,廃止又は改正その他の事項〉について請願をなすことができると定める(16条)。ここで,〈その他の事項〉と明記されていることからも明らかなように,国または地方公共団体の機関の職務に関するすべての事項が請願の対象とされる。したがって,当該機関の職務に関するものであれば,請願者の利害に直接関係しなくても,すべてその対象とされる。なお,裁判所に対する請願について,それが裁判所に対する圧力,司法権の独立の侵害にならないか,という問題がある。これについては,請願権がその性質上単なる希望の表明にすぎず,また,憲法は,その行使に際して〈平穏に〉行うことを義務づけていることから,裁判に関する事項をとくにその対象から除外する理由はないと思われる。
請願権は,国または地方公共団体の機関に対して請願の受理という作為義務を課すところから,受益権としての性格をもつが,その現代的な機能としては,議会民主制の下で,代議制度のもつ欠陥を是正する参政権的な作用を営むものとして注目される。
なお,請願権は,明治憲法の下でも,臣民が天皇,貴衆各院,一般官公署に対して希望を開陳する憲法上の権利として認められていた(30条)が,請願令(1917年公布の勅令)により,皇室典範,憲法の変更および裁判に関する請願は許されなかった。
執筆者:高見 勝利
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
国民が国または地方の公共団体に対して、ある事項に関する希望を文章により、直接、陳述する行為をいう。その対象となる事項は、権利侵害の救済、公務員の罷免、法律・命令または規則の制定・廃止・改正、その他(統治上の利害関係に関する事項)である。
言論の自由が保障されず、参政権が認められず、また司法的な権利救済制度が整備されていなかった封建的専制時代にあっては、請願は、民意を為政者に伝達し、国民の権利を救済するための唯一のはけ口としてきわめて重要な手段であった。専制者に対する被治者の最小限の抵抗であった。請願は、その受理を相手方の国家または公共団体の機関に要求しうるだけで、内容についての回答を求める権利ではない。議会制度が発達した近代国家においては、請願は議会を通じて行われるようになったため、政治的効果は大きくない。しかし、それは議員発案権の起源ともなったのである。
国民の請願権を規定した古くて有名なものは、1689年のイギリスの権利章典Bill of Rightsである。「王に請願するは臣民の権利であり、かかる請願に対するすべての処罰は違法である」旨が宣言されている。今日、諸国家の憲法は、多く請願権を伝統的な権利として認めている。請願は、代議政治の欠陥を補充する直接民主政治の手段の一つであり、新鮮な国民の政治的意見を国政に注入する役割を果たす制度といえよう。「大日本帝国憲法」では請願が認められ(30条)、天皇、行政官庁に対する請願について請願令(大正6年勅令37号)に詳細な規定が設けられていた。「日本国憲法」は平穏に請願する権利を認めている(16条)。請願一般に関する規定は請願法(昭和22年法律13号)に、国会に対する請願は国会法(79条~82条)、地方議会に対する請願は地方自治法(124条・125条)に規定がある。
[伊藤 勲]
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