プロスロギオン(その他表記)Proslogion

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プロスロギオン」の意味・わかりやすい解説

プロスロギオン
Proslogion

アンセルムス主著の一つで,対語録の意。 1078年の作。別名『神の存在についての対話』 Alloquium de Dei existentia。『モノロギオン』を受けてさらに体系化されたもので,神の本体論的証明主題としており,それ自体で十分であり他のあらゆる証明の根拠となりうる唯一の証明を試みている。われわれは神の存在を信じ,神よりも大きなものを考えることはできないと信じている。愚者でさえも存在しうるかぎり最大であるものについての観念をもつ。この前提に従って彼は次のように論証する。神はそれ以上大きなものが考えられないようなものである。ところでそれ以上大きなものが考えられないものは,ただ観念としてではなく実在性をもたねばならない。それゆえ神は実在する。もし神が実在しなければ,人は神の観念をもつことができない。ガウニロは理想上の幸福の島の観念が必ずしもその実在性を保証しないとして駁論を企てた。アンセルムスは神と幸福の島を完全な存在性の観念という点で区別し反論している。ボナベントゥラドゥンス・スコツス,デカルト,ライプニッツ,ロスミーニらはなんらかの形でアンセルムスの証明を支持するが,トマス・アクィナスは否定する。

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世界大百科事典(旧版)内のプロスロギオンの言及

【アンセルムス】より

…アンセルムスは信仰を超自然的・非理性的に固定すること,また逆に自然的理性の中にとじ込めることのいずれをも退けて,神学固有の認識方法を立てたのであるが,その対象把握の深さと論証の厳密さとは比類なきもので,時代を超えて神学の模範となった。最初の著作《モノロギオン》はアウグスティヌスの《三位一体論》にならいつつも,独自の仕方で最高存在が三位一体をなすことを論証し,次の《プロスロギオン》では逆に三位一体からして神の存在が概念的にも必然であることを論証する。そしてこの循環の中で,最高存在はギリシア的な永遠不動の神ではなく,三位一体として働く活動的な存在であることが明らかにされた。…

※「プロスロギオン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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