改訂新版 世界大百科事典 「ヘイル」の意味・わかりやすい解説
ヘイル
Pieter Catharinus Arie Geyl
生没年:1887-1966
オランダの歴史家。ガイルともいう。1906-11年ライデン大学でオランダ語学・文学を学び,学位を得る。《新ロッテルダム新聞》のロンドン特派員(1914-19)ののち,ロンドン大学でオランダ史講座教授(1919-36),帰国してユトレヒト大学教授(1936-58)。第2次世界大戦中の40-44年,占領ドイツ軍への非協力により収容所生活を送った。名著《ネーデルラント民族史》(3巻。1930-37)は,ベルギーのフランドル(フランデレン)運動に触発され,国民主義史観を排してベルギーのフラマン語地域を包含する統一的なネーデルラント文化圏の成立と発展を中世以降のネーデルラント史のなかに立証し,〈大ネーデルラント主義〉の先駆となった。またオランダ共和国の成立,オラニエ家,愛国党,バタビア共和国などに関して精力的に通説批判を行い,独創的な新史観を主張した。第2次大戦後はフランス史の叙述に現れたナポレオン像を検討し,歴史学の理論と方法を論じ,また多数の英文による著書,論文やトインビー批判により世界的に名を知られた。
執筆者:栗原 福也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報