ドルトレヒト(英語表記)Dordrecht

改訂新版 世界大百科事典 「ドルトレヒト」の意味・わかりやすい解説

ドルトレヒト
Dordrecht

オランダ南西部,南ホラント州の都市。人口11万9263(2005)。正しくはドルドレヒトと読む。ワールWaal川(ライン川下流)の支流メルウェーデMerwede川とその分流ノールトNoord川の分岐点に臨み,オランダの心臓部を形成する環状都市群の南端に位置する。後期ゴシック様式の聖母教会のほか,破風屋根を持つ多くの建物が並び,古い面影を残す。金属,機械,化学,造船,食品,縫製などの工業が発達し,フィリップスエレクトロニクス),リプス(金庫,鍵)の工場もある。中世以来ライン川,マース(ムーズ)川の貿易を支配する良港として商工業が栄えた。近世以降アムステルダム,ロッテルダムに追い越されて衰微したが,1930年代に港湾施設は近代化された。40年5月第2次大戦勃発に際しドイツ軍による大破壊を受けた港は戦後再開され,58年には第2埠頭が建設された。新マース運河出口のマースフラクテMaasvlakte港完成後,港への外航船の出入りは減少したが,依然として内陸水路運輸の一中心である。

 ドルトレヒトは,13世紀前半にホラント伯から都市特許状,市場強制特権を与えられ,同伯家の保護のもとに繁栄した。16世紀には改革派信仰をいち早く受け入れ,1572年海乞食(乞食団)の拠点となり,対スペイン反乱の先頭に立った。また,1618-19年ドルトレヒト会議が開催され,ホマルス派がアルミニウス派勝利を占めた。

 なお,江戸幕府の軍艦開陽丸は1865年同市のヒップス造船所で建造され,幕府留学生赤松則良らもここに滞在して造船・操船術を学んだ。
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百科事典マイペディア 「ドルトレヒト」の意味・わかりやすい解説

ドルトレヒト

オランダ南西部の都市。ロッテルダム南東20km,マース川の河港市で鉄道中心地。造船,製粉,製糖などの工業が行われる。1008年に創建され,16世紀にはオランダにおける宗教改革発端の地となった。11万8810人(2011)。

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