アメリカの天文学者。巨大望遠鏡の建設、太陽物理学の推進者。シカゴに生まれる。1890年マサチューセッツ工科大学で物理学、数学を修め、1892年にシカゴ大学の天体物理学準教授に登用される。翌1893年ヨーロッパに遊学し諸学者の知己を得る。実業家ヤーキスCharles Tyson Yerkes(1837―1905)の寄付によりシカゴ大学付置の天文台(ヤーキス天文台)を設立、深さ9メートル余の塔望遠鏡を建設し、クラーク製口径100センチメートル屈折望遠鏡を設置した。台長として優れた新進を指導、1895年に『天体物理学雑誌』を発行した。さらに大望遠鏡を切望し、1904年カーネギー財団の援助によりウィルソン山に天文台を建設、初代台長となり、257センチメートル反射望遠鏡を設置した(1917)。さらにロックフェラー財団を説得してパロマ山天文台を設立、1928年、508センチメートル反射望遠鏡の建設に着工、第二次世界大戦により完成が遅れ、彼の没後1949年に写真観測が始められた。1889年に分光太陽写真儀を考案してカルシウムのスペクトル線による単色光太陽像を観測し、また太陽黒点の吸収線がゼーマン効果によって広がっていることから強磁場の性質を明らかにした。
[島村福太郎 2019年2月18日]
アメリカの天文学者。シカゴ生れ。マサチューセッツ工科大学卒業。1892年ころフランスのデランドルHenri Deslandres(1853-1948)とは独立に,スペクトロヘリオグラフを考案し自作する。これを使い,太陽彩層の諸現象を観測し,太陽面現象の研究の先駆者となる。その後,シカゴの電鉄王ヤーキスの援助で,シカゴ大学付置のヤーキス天文台を設立し,そこに当時世界一の口径1mの屈折望遠鏡をつくる。1895年から1905年まで同天文台の初代台長を務める。次いで,カーネギー財団の援助を得て,天候のよいウィルソン山に1904年天文台を設立し,高さ20mと50mの塔望遠鏡をつくる。これを駆使し,08年太陽黒点のスペクトル線には分かれてみえるものがあること,この原因はゼーマン効果によるものであることを確認し,黒点に磁場が存在することを発見する。1904年から23年までウィルソン山天文台長であり,その間,1908年に1.5mの反射望遠鏡を,17年に2.5mの反射望遠鏡を建設した。いずれも当時世界一である。さらにパロマー山天文台に5m反射望遠鏡の実現に力をつくしたが,これは彼の死後10年たった48年に完成をみた。この望遠鏡は,彼の名にちなんでヘール望遠鏡,また両天文台は,合わせてヘール天文台と呼ばれる。
執筆者:日江井 栄二郎
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…黒点の低温なのは磁場が太陽中心からのエネルギーの流れをせきとめているからだと考えられている。
[ヘールの法則]
標準的な黒点は東西に並んだ正負の磁極をもつ1対として現れ,正負の並び方は北半球と南半球で逆であり,しかも黒点周期ごとに南北半球の現象が入れ代わるという法則で,1925年G.E.ヘールが発見した(図3)。この見地からすると太陽活動の周期は約22年であるということができる。…
…この分離が磁場の強さに比例するので,ゼーマン効果は天体の磁場を知る手段を与えた。アメリカのG.E.ヘールは,1908年黒点の吸収線の中に異常に線幅の広いものがあり,偏光を調べゼーマン効果によるものであることを証明し,黒点は2000~3000ガウスにも達する強い磁場をもつことを明らかにした。 コロナの物理的状態は日食時に撮ったスペクトルにより明らかにされた。…
…W.ハーシェル時代の反射鏡は金属を研磨したものであったが,19世紀の半ばにドイツの学者によってガラス製の反射鏡が作られ,製作の容易なために屈折望遠鏡以上に大きなものが作られることになった。20世紀初めにはアメリカのヘールGeorge Ellery Hale(1868‐1938)は257cmの反射望遠鏡をもつウィルソン山天文台を建設し,さらに,508cmの反射望遠鏡がパロマー天文台に設置され,現在では200cm以上の大望遠鏡は30基近い数となるに至った。 こうした望遠鏡の発達と並んで写真術が天文学にとり入れられた。…
※「ヘール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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