ヘール(読み)へーる(英語表記)George Ellery Hale

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘール」の意味・わかりやすい解説

ヘール
へーる
George Ellery Hale
(1868―1938)

アメリカの天文学者。巨大望遠鏡の建設、太陽物理学の推進者。シカゴに生まれる。1890年マサチューセッツ工科大学で物理学、数学を修め、1892年にシカゴ大学の天体物理学準教授に登用される。翌1893年ヨーロッパに遊学し諸学者の知己を得る。実業家ヤーキスCharles Tyson Yerkes(1837―1905)の寄付によりシカゴ大学付置の天文台(ヤーキス天文台)を設立、深さ9メートル余の塔望遠鏡を建設し、クラーク製口径100センチメートル屈折望遠鏡を設置した。台長として優れた新進を指導、1895年に『天体物理学雑誌』を発行した。さらに大望遠鏡を切望し、1904年カーネギー財団の援助によりウィルソン山に天文台を建設、初代台長となり、257センチメートル反射望遠鏡を設置した(1917)。さらにロックフェラー財団を説得してパロマ山天文台を設立、1928年、508センチメートル反射望遠鏡の建設に着工、第二次世界大戦により完成が遅れ、彼の没後1949年に写真観測が始められた。1889年に分光太陽写真儀を考案してカルシウムのスペクトル線による単色光太陽像を観測し、また太陽黒点吸収線ゼーマン効果によって広がっていることから強磁場の性質を明らかにした。

[島村福太郎 2019年2月18日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヘール」の意味・わかりやすい解説

ヘール
Hale, George Ellery

[生]1868.6.29. イリノイ,シカゴ
[没]1938.2.21. カリフォルニア,パサディナ
アメリカ合衆国の天文学者。1890年マサチューセッツ工科大学卒業。ベルリンに留学後,1891年シカゴにケンウッド天文台を創設。また 1897年にヤーキズ天文台,1904年にはウィルソン山天文台を新設して初代台長となる。1897~1905年シカゴ大学教授として天体物理学を担当。国立研究評議会発足に尽力 (1916) 。分光太陽写真儀 (スペクトロヘリオグラフ) の発明 (1890) やスペクトロヘリオスコープの発明 (1926) ,およびパロマ山天文台の 200インチ (約 5m) 大反射望遠鏡(ヘール望遠鏡)の建設に努力するなど,天文観測装置の発展に貢献。また太陽の黒点の磁場を発見したことでも有名。1894年国際的専門誌『天体物理学雑誌』Astrophysical Journalを発刊。合併したウィルソン山天文台およびパロマ山天文台は 1970年,ヘールを記念してヘール天文台と改められた。

ヘール
Hale, Sir Matthew

[生]1609.11.1. グロスターシャー,オールダリー
[没]1676.12.25. グロスターシャー,オールダリー
イギリスの裁判官。 1637年法曹界に入り,清教徒革命中は不偏不党の態度を貫き,共和国時代にも厳正中立に裁判にあたった。護国卿時代から王政復古時代にかけて,民訴裁判所 (1653~58) ,財務裁判所 (60~71) ,王座裁判所 (71~76) の判事をつとめた。清教徒革命の激動期にコモン・ローが変化を受けなかったのは,彼の努力によるところが大きかったといわれる。『コモン・ロー史』 History of the Common Law (1713) ,『刑事訴訟史』 History of the Pleas of the Crown (36) の著作によっても知られる。

ヘール
Geel

ベルギー北部,アントウェルペン州の小都市。アントウェルペンの東約 40kmに位置する。7世紀のアイルランド人殉教者聖ディンフナをまつる教会があり,その墓参りをすれば精神障害がなおるという言い伝えにより,古くから精神障害者の巡礼が多かった。教会では付属の病室に巡礼者を収容していたが,14世紀頃からは病室に収容しきれない者を市民がその家庭で世話するという独特の慣習が始った。この慣習は 1850年には国家の管理する一種の医療システムに形を変えながら,現在でも受継がれており,市の最大の特色となっている。工業は食品加工,たばこ,瓦製造など小規模であるが,交通の便のよいことからも,南ケンペン工業開発地域の一部に指定されている。人口3万 2487 (1991) 。

ヘール
Geer, Louis de

[生]1587. リエージュ
[没]1652.6. アムステルダム
オランダの製鉄業者,鉄商人。リエージュ郊外の製鉄業者,鉄商人の子として生れ,1593年家族とともにドルトレヒトに移り,鉄取引によって財を築いた。ヘールはアムステルダムに移って国際的武器商人になり,さらにスウェーデン王グスタフ2世 (グスタフ・アドルフ) に招かれスウェーデンの鉱山開発のために移住し (1627) ,帰化を認められた。多数の鉱山,製鉄・製砲所などを精力的に経営し,スウェーデン工業の父と呼ばれ,大財閥を築いた。

ヘール
Hale, Edward Everett

[生]1822.4.3. ボストン
[没]1909.6.10. マサチューセッツ,ロクスベリー
アメリカのユニテリアン派牧師,小説家。ウースターの「統一教会」,ボストンの「南部組合教会」の牧師をつとめたのち,1903年から上院礼拝堂付き牧師。その間宗教,文学上の著作を多数発表したが,南北戦争のとき愛国心を鼓舞するために書いた短編小説『故郷のない男』 The Man Without a Country (1863) が有名。

ヘール
Hail, Alexander Durhan

[生]1844.4.16.
[没]1923.6.5.
アメリカの長老派宣教師。神学と医学を学び,1878年来日して大阪,和歌山,三重などで伝道に努め,晩年は大阪府下外島保養院の癩患者の伝道に尽した (1912~23) 。大阪東教会を創立。大阪女学院の創立者の一人。

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