日本大百科全書(ニッポニカ) 「べっこう細工」の意味・わかりやすい解説
べっこう細工
べっこうざいく
べっこう細工とは、ウミガメの一種であるタイマイの甲を何枚か重ね、水と熱を加えながら圧縮してつくったものをいう。櫛(くし)、笄(こうがい)、眼鏡のつる、カフスボタン、ペンダント、ネックレス、ネクタイ止め、置物などの装飾品がつくられている。江戸時代に幕府の鎖国政策により、長崎のみがオランダ、中国との交易が認められ、この経路で、宝永(ほうえい)年間(1704~11)中国から長崎に、べっこうを加工する技術が輸入された。べっこう細工のむずかしさは、厚さと模様の「合わせ」と切り口の研磨にある。カメのつめや腹は厚さがまちまちなので、薄いところには何枚も重ね合わせ、厚いところは削る。厚さと模様合わせのできたべっこうは、型どおりに糸鋸(いとのこ)で切断し、切り口をやすりで研いだり、小刀で表面を削ったり、モーターを使って磨いたりする。そうすると、何枚も重ね合わせたとは思えないほど、美しいものに仕上がる。
[秋山光男]