タイマイ(読み)たいまい(英語表記)hawksbill turtle

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タイマイ」の意味・わかりやすい解説

タイマイ
たいまい / 玳瑁
瑇瑁
hawksbill turtle
[学] Eretmochelys imbricata

爬虫(はちゅう)綱カメウミガメ科の動物。その甲がべっこう(鼈甲)とよばれて、古来べっこう細工の材料とされてきたため、本種にはベッコウガメ、ベッコウなどの別名もある。ウミガメ類のなかでは中形の種で、世界の熱帯から亜熱帯海洋分布する。日本では沖縄県下の八重山列島(やえやまれっとう)でわずかながら産卵が行われているが、北限の産卵場である。老成したものは甲長1メートル近くになる。背甲の鱗板(りんばん)は成長に伴って瓦(かわら)状に重なっていく。背甲は茶褐色地に、いわゆるべっこう色の不規則な斑紋(はんもん)が成長とともに顕著に現れるが、鱗板の色や紋様は変化に富む。肋甲板(ろっこうばん)は4対、椎甲板(ついこうばん)は5枚を基本とするが変異もみられる。前額板は2対、第1肋甲板は頂甲板に接することはない。

 サンゴ礁の発達した地方浅海にすみ、海綿類や貝類、カニ類、海藻類などを食べる。成体は定着性があり、大きな移動や回遊は行わない。口先は、下方にピンセットのように強く曲がって鋭く、サンゴの間の小動物をつまみ取ったり貝類を食べるのに都合がよい。英名のhawksbill(ワシの嘴(くちばし)の意)は側面からみた吻部(ふんぶ)の形態に由来するものである。卵は食用にされる。また肉は地域によって毒化することがあり、このおそれのない地方では食用に供している。近年、世界的な乱獲によって資源の減少が著しく、国際的に保護する傾向にある。

[内田 至]


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改訂新版 世界大百科事典 「タイマイ」の意味・わかりやすい解説

タイマイ (玳瑁)
hawksbill turtle
Eretmochelys imbricata

甲がべっこうとして細工物の材料とされるウミガメ科の海生ガメ。甲長70~90cm,体重120kgに達する。太平洋,インド洋,大西洋の暖かい海にすみ,日本では南西諸島の一部に産卵のため上陸することもある。産卵数は一度に160個ほど。背甲の鱗板は覆瓦(ふくが)状に重なり合うが,成長すると敷石状に配列して滑らかとなる。上あごの前端は鉤(かぎ)状に曲がり,魚,甲殻類,軟体動物などをとらえるが,藻類を食べることもある。背甲の鱗板は黄褐色か赤褐色に暗色の不規則な雲状斑紋があり,老熟個体ほど全体が暗くなる。鱗板はべっこう細工の材料として日本でも古くから珍重され,櫛などの装飾品のほか,鱗板の切片を器物にはりつける玳(瑇)瑁貼(たいまいばり)の装飾技法は,昔から工芸に用いられてきた。近年では甲全体を剝製として飾物にもする。また肉は食用に供せられるが,タイマイが食べる餌の種類によって,有毒な場合もある。乱獲の結果数が減少し,現在はワシントン条約による保護動物に指定されている。
ウミガメ
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百科事典マイペディア 「タイマイ」の意味・わかりやすい解説

タイマイ

爬虫(はちゅう)類ウミガメ科。甲長90cmに達する。背面は黄褐色地に黒褐色の斑紋があり,腹面は淡黄色。背甲の鱗板は若体では敷石状,成長に従って瓦状に重なり,老熟個体では再び敷石状に並ぶ。他のウミガメ同様雑食性。太平洋・インド洋・大西洋の熱帯・亜熱帯の海洋に分布。日本では南西諸島の一部に産卵のため上陸することもある。甲は鼈甲(べっこう)。日本は細工用材料としてタイマイの輸入を続けてきたが,ワシントン条約では原則として商業取引を禁止している。1991年の日米協議において1992年末での輸入禁止が決定。絶滅危惧IB類(環境省第4次レッドリスト)。
→関連項目ウミガメ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タイマイ」の意味・わかりやすい解説

タイマイ
Eretmochelys imbricata; hawksbill

カメ目ウミガメ科のカメ。鼈甲亀 (べっこうがめ) とも呼ばれる。甲長 60cm内外で,ウミガメ類ではやや小型。甲は中央板5枚,中央側板4対,縁板 25枚が瓦状に重なり合ってできている。黄褐色に濃黒色の雲状紋があり,いわゆる「鼈甲 (べっこう) 」として細工物に使われる。熱帯から亜熱帯に産し,日本中部以南の太平洋岸にも姿を見せる。夏季,砂地の海岸に上陸し,穴を掘って 90~150個の卵を産む。

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普及版 字通 「タイマイ」の読み・字形・画数・意味

瑁】たいまい

鼈甲。

字通「」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内のタイマイの言及

【ウミガメ(海亀)】より

…完全な海生種で,陸地には産卵期しか上陸しないが,アオウミガメが日光浴のため無人島の砂浜にやってくることが知られている。現生のウミガメ類の分類には諸説があるが,ウミガメ科を骨格の違いでアオウミガメ亜科とアカウミガメ亜科の2グループに分け,前者にはアオウミガメChelonia mydas(イラスト)とオーストラリアアオウミガメC.depressaの2種,後者にはアカウミガメCaretta caretta(イラスト),ヒメウミガメLepidochelys olivacea,ケンプヒメウミガメL.kempiiおよびタイマイEretmochelys imbricata(イラスト)の4種を含む考え方が支持されている。 海洋生活に適応してウミガメ類の甲は平らで,他のカメ類より退化しており,頭部と四肢は甲内に完全には引きこめることができない。…

【ウミガメ(海亀)】より

…完全な海生種で,陸地には産卵期しか上陸しないが,アオウミガメが日光浴のため無人島の砂浜にやってくることが知られている。現生のウミガメ類の分類には諸説があるが,ウミガメ科を骨格の違いでアオウミガメ亜科とアカウミガメ亜科の2グループに分け,前者にはアオウミガメChelonia mydas(イラスト)とオーストラリアアオウミガメC.depressaの2種,後者にはアカウミガメCaretta caretta(イラスト),ヒメウミガメLepidochelys olivacea,ケンプヒメウミガメL.kempiiおよびタイマイEretmochelys imbricata(イラスト)の4種を含む考え方が支持されている。 海洋生活に適応してウミガメ類の甲は平らで,他のカメ類より退化しており,頭部と四肢は甲内に完全には引きこめることができない。…

※「タイマイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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