「研摩」は「研磨」の書き換え。
硬度の高い粒状または粉末状の物質(砥粒(とりゅう))やそれらを結合剤により固定した砥石を用いて、工作物に一定圧力を加えながら、加工物表面をこすり仕上げ、所要の仕上げ面品質にする加工法。前者のような固定しない遊離砥粒を用いるものとして、バフ加工、バレル加工などがあり、寸法精度よりも仕上げ面品質が重視される場合に用いる。固定砥粒を用いるものとしては、ホーニングや超仕上げ加工(より滑らかで、精度の高い仕上げ面を得るための加工法)などがある。
砥粒を用いる加工法を総称して砥粒加工という。砥粒加工を大別すると、固定砥粒(砥石または研磨布紙(ふし))を用いる加工法(広義の研削加工)と、遊離砥粒を用いる加工法がある。砥粒加工法は後者を用いる「みがき」で始まり、研削砥石やスティック砥石のような固定砥粒による加工法も加わり発展してきた。したがって、砥粒加工は、加工物表面をこすり仕上げるものと考えられ、「研磨」という術語が使われていたが、現在では、バイト削りやフライス削りの金属切削と同様に砥粒も切屑(きりくず)を発生しており、みがき、つまり研磨作用のみではないことが明らかとなり、とくに固定砥粒を用いる加工法に対しては「研削」というようになった。しかし、固定砥粒を用いる場合でも、工作物に一定圧力を加えながら仕上げるみがきを主体とする加工法に対しては研磨加工とよんでいる。
また研削加工についても、昔の名残(なごり)で、「工具の集中研磨」などと、工具の研削に対しては研磨という術語が使われていた時代もあったが、現在では、上述のように明確に区別されている。塗装用語でも研磨という術語が、塗装工程中の各段階で行われる一連の作業の「とぎ」と「みがき」に対して用いられている。
[清水伸二]
研磨材によって金属,ガラス,プラスチック,セラミックス,石材,ゴムなどの工作物表面をごく微少量ずつ削ったり,すり磨いたりして,所定の寸法,形状,品質に加工する表面仕上げ法の総称。研磨材を微粉状の遊離砥粒(とりゆう)として使用するものには,ラッピング,ポリシング,バフ仕上げ,バレル加工,噴射加工,超音波加工などが,また,固定砥粒として使用する加工法には,研磨材を表面に固着させた紙や布を用いる研磨布紙加工,研磨材をといしに加工して用いるホーニングや研削加工および超仕上げなどがあり,研削も研磨に含まれることになるが,狭義には,このうちとくに表面あらさが0.01μm以下の鏡面仕上げ(鏡面研磨)が行える(超精密)ラッピングや(超精密)ポリシングを研磨と呼ぶことが多い。これらの鏡面研磨は,試料と工具の間に砥粒と研磨液を入れてすり合わせる操作が用いられる。ラッピングでは,粒度♯200~♯1000程度の砥粒と硬質工具が用いられ,研磨面は主として砥粒の転動と引っかきによる機械的な微小破砕や塑性流動によって創成される。ポリシングでは,平均粒径が1μmから100Å程度の微粉砥粒とそれを弾塑性的に保持するウレタンや人工皮革のような軟質工具が用いられる。また,ICや超LSI基板のような半導体部品や光応用素子などの最終研磨には,研磨面を砥粒の機械的な引っかき作用を主体に創成するのではなく,表面の結晶構造をできるだけ乱さないように仕上げるため,無じょう乱研磨が採用される。この一つであるメカノケミカルポリシングでは,研磨液に弱アルカリ溶液や硫酸や塩酸などの酸性溶液が用いられ,コロイド状砥粒の機械的作用と研磨液の化学的作用との複合効果を利用して,表面あらさが20Å以下の鏡面仕上げが能率よく行われる。
→研磨材 →鑢(やすり)
執筆者:長谷川 素由
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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