日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベッチマン」の意味・わかりやすい解説
ベッチマン
べっちまん
Sir John Betjeman
(1906―1984)
イギリスの詩人。ロンドンに生まれ、オックスフォードのモードリン・カレッジに学ぶ。ジャーナリストとしての声価も高く、ビクトリア朝、エドワード朝の建築や風物に対する関心から、その方面の著述も多い。詩人としては、第一詩集『シオン山、あるいは、無限に触れて』(1931)以降数多くの詩集があるが、とくに1960年に発表した韻文による自叙伝『鏡に招かれて』が一般読者に受け入れられて珍しい売れ行きをみせ、改めて注目を集めた。72年桂冠(けいかん)詩人に叙せられた。1930年代に活躍したいわゆるオーデン・グループAuden Groupの詩人たちとは、年齢も教育も社会的階層もまったく重なり合っていたにもかかわらず、彼らには属さず、思想は穏健、心情は保守的、趣味は懐旧的で、詩風もけれん味のない古風なスタイルで押し通して、イギリス詩の懐(ふところ)の深さを示すこととなった。
[沢崎順之助]