改訂新版 世界大百科事典 「ベニクダウミヒドラ」の意味・わかりやすい解説
ベニクダウミヒドラ
Tubularia mesembryanthemum
ヒドロ虫綱クダウミヒドラ科の腔腸動物。本州中部の内湾とヨーロッパ沿岸でアジモや海藻などの上にヒドロ根で付着する。不規則にはいまわるヒドロ根のところどころから,高さ3cmほどのヒドロ茎が立ち上がり,その先端にヒドロ花をつける。ヒドロ茎はだいだい色で,上方が急に折れ曲がっている。ヒドロ花は大きく,淡紅色で,中央の先端に開く口の周囲に約10本の短い糸状触手がとり巻き,またヒドロ花下部にも約20本の長い糸状触手が1環列に並んでいる。ヒドロ花下部の触手環の内側にはブドウの房のような生殖体が10個内外あり,おのおのの房には数個の子囊がついていて,先端に5~6個の小さな突起物がある。子囊中の卵が受精してプラヌラからさらにアクチヌラ幼生にまで成育してから遊離する。しばらく自由運動をしたあと他物に着生して変態し,小型の幼ポリプになる。アマモの葉に付着している状態をみると古い葉,または葉の古い部分に多くつく傾向がみられる。漁網などに密生すると害になることもある。
執筆者:今島 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報