日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベルギー連続テロ」の意味・わかりやすい解説
ベルギー連続テロ
べるぎーれんぞくてろ
March 2016 Belgium attacks
2016年3月22日朝(日本時間22日夕)、ベルギーの首都ブリュッセルで連続して起きたテロ事件。「ベルギー同時テロ」「ブリュッセル連続テロ」などともよばれる。ブリュッセル国際空港の出発ロビーにおいて自爆テロが発生し、ほぼ1時間後には市中心部の地下鉄マールベーク駅構内でも自爆テロが起きた。死亡者は32人、負傷者は約340人に達した。イスラム過激派組織イスラミック・ステート(IS、イスラム国)が22日夜、インターネット上に犯行声明を出した。ベルギー検察は実行犯5人を特定し、自爆死した3人を除く2人を拘束した。実行犯5人は2015年11月のパリ同時多発テロに直接・間接的に関与していたとみられており、背後にヨーロッパにまたがるテロリストのネットワークが存在するともいわれている。ベルギー連続テロなどヨーロッパでの相次ぐテロは、中東から増大する移民流入とともに、ヨーロッパ各国がシェンゲン協定で掲げる「域内移動の自由」理念に影を落としたほか、イギリスがヨーロッパ連合(EU)からの離脱を決めた国民投票へ大きな影響を与えた。
テロ直後の22日、ベルギー政府はベルギー全土のテロ警戒レベルを4段階のうち最高の「レベル4」に引き上げ、軍兵士をブリュッセル主要機関に追加配置し、ベルギー南部の原子力発電所の作業員を避難させた。ブリュッセル地域を走る地下鉄や国鉄の主要駅は閉鎖され、バスや路面電車などすべての公共交通機関が停止。ブリュッセル行き航空便の欠航、ベルギー向け旅行の中止などが相次いだ。EU職員らは外出を控えるよう指示された。日本、アメリカ、ドイツ、フランス、中国の各国政府や、国際連合、EUなどがテロを非難し、テロ捜査への協力とテロ防止への連携を確認した。イスラム過激派の犯行とされるヨーロッパでのテロには、2004年3月のマドリード列車爆破テロ(191人死亡)、2005年7月のロンドン同時爆破テロ(56人死亡)、2015年1月のシャルリー・エブド襲撃事件(17人死亡)、2015年11月のパリ同時多発テロ(130人死亡)などがある。
[矢野 武 2016年11月18日]