シャルリー・エブド襲撃事件(読み)しゃるりーえぶどしゅうげきじけん

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

シャルリー・エブド襲撃事件
しゃるりーえぶどしゅうげきじけん

2015年1月7日、フランスの風刺週刊新聞『シャルリー・エブドCharlie Hebdo』の本社がイスラム過激派に襲撃され、同紙の編集長で風刺漫画家であったシャルボニエStéphane Charbonnier(1967―2015)をはじめ、社内にいたコラムニストや漫画家、警護警官を含む12人が殺害された事件。容疑者はフランス国内で生まれたアルジェリア系の兄弟であった。襲撃後に逃走した2人は、9日にパリ郊外の印刷工場に人質をとって立てこもり、治安部隊との銃撃戦によりともに死亡した。国際テロ組織アルカイダ系の武装勢力アラビア半島のアルカイダ」(AQAP:Al-Qaeda in the Arabian Peninsula)から資金面などの支援を受けていたことがわかっている。

 『シャルリー・エブド』紙は、2006年と2012年にイスラム教の預言者ムハンマド風刺画を掲載し、さらに、2013年には漫画『ムハンマドの生涯』を発行したことなどから、イスラム社会から信仰を侮辱するものだとして強く非難されていた。殺害された編集長は殺害脅迫を受けて警察の警護対象者になっており、フランス政府からは掲載内容に関する自粛要請が行われていたという。しかし事件直前にはイスラム過激派の聖戦に参加する人を揶揄(やゆ)する風刺画を掲載した。

 また、シャルリー・エブド襲撃事件と並行して、パリ郊外南部のモンルージュで1月8日、女性警官が銃殺される事件が発生した。容疑者は、9日、パリ東部ポルト・ド・バンセンヌにおいて食料雑貨店で人質4人を殺害して立てこもったが、踏み込んだ警官に撃たれ死亡した。過激派組織「イスラミック・ステートIS、イスラム国)」のメンバーで、その後の調べから、シャルリー・エブド襲撃事件の容疑者らと同調しながら今回の事件を起こしたことがわかった。

 3日間で17人が殺害され、20人以上が負傷した凄惨(せいさん)な事件に対し、パリでは参加者370万人という大規模なデモ行進が行われ、世界40か国の首脳も参加した。事件の背景には、北アフリカなどからの移民イスラム教徒が、差別や迫害を受けて先鋭化しているという社会問題があるとされる。事件後、ISやアルカイダ系組織は容疑者を英雄として称揚するメッセージを発表した。

[編集部]

シャルリー・エブド

フランスの週刊新聞。1970年創刊。公称発行部数3万部。フランス語エブドは週刊の意味で、シャルリーはアメリカの人気漫画『ピーナッツ』のキャラクターであるチャーリー・ブラウンからとられたとされる。同紙は1960年代に数度の発禁処分を受けた左派的傾向の強い月刊誌『アラキリHara-Kiri』を前身として創刊された。アラキリは日本の武士の腹切りということばから命名されたという。宗教や政治のタブーに踏み込み、表現の自由に制限はない、という方針である。2011年(平成23)の東北地方太平洋沖地震の影響により発生した東京電力福島第一原子力発電所事故の状況を揶揄した風刺画を掲載し、日本政府がフランス政府に抗議するなど、物議を醸したことでも知られる。

[編集部]

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知恵蔵 の解説

「シャルリーエブド」襲撃事件

「仏紙銃撃テロ事件」のページをご覧ください。

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