ロンドン同時爆破テロ(読み)ろんどんどうじばくはてろ(その他表記)London Attacks

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロンドン同時爆破テロ」の意味・わかりやすい解説

ロンドン同時爆破テロ
ろんどんどうじばくはてろ
London Attacks
London Bombings
the London terrorist attacks

2005年7月7日、イギリスのロンドン中心部の4か所で起きたテロ事件。爆発物を使用したテロ攻撃であり、ロンドン同時テロ、ロンドン同時多発テロともよばれる。午前8時50分ころから約1時間の間に、地下鉄車両3か所、バス車両1か所で次々と爆発が起き、多くの死者、負傷者を出した。

 爆発は8時50分ころほぼ同時に、金融街シティー付近のリバプールストリート駅―オルドゲートイースト駅間の地下鉄車両、ラッセルスクエア駅―キングズクロス駅間の地下鉄車両、エッジウエアロード駅構内の地下鉄車両で起き、その後同9時47分ころタビストックスクエアの2階建てバス車両での爆発が続いた。

 当日、同国スコットランドのグレンイーグルズでは主要国首脳会議(G8(ジーエイト)サミット)が開催されており、この会期中をねらった犯行とみられる。7日当日には「欧州アルカイダ機構秘密組織」を名乗るグループから、また9日にはアルカイダ系の「アブハフス・アルマスリ隊(軍団)」を名乗る組織から犯行声明が出されたが、真偽は不明。事件後、ロンドン警視庁は、この一連のテロを公式に自爆テロと認め、実行犯とされる4名を特定。そのうち3名はパキスタン系イギリス人、1名はジャマイカ系イギリス人(いずれもイギリス国籍をもつ)で、全員が死亡。ほかにも、このテロ計画の首謀者および関係者がいるとされる。2004年3月のマドリードでの列車爆破テロ事件との類似も指摘され、アルカイダ系イスラム過激派組織による犯行の可能性が高いとみられる。

 なお、同8日、主要国首脳会議はイギリスのブレア首相が議長総括を行い閉幕したが、ロンドン同時爆破テロを受け、「テロ対策に関するG8首脳声明」を採択。テロとの戦いの強化、テロリスト活動の阻止、新世代テロリストの出現防止など、テロ対策の国際的連携が盛り込まれた。

 一連のテロによる犠牲者数は確定されていないが、2005年7月20日の時点では、死者56名(実行犯4名を含む)、負傷者は700名以上に及ぶとみられる(うち日本人1名が軽傷)。

[編集部]

『山本浩著『憎しみの連鎖――アルカイダ工作員の実像』(2002・日本放送出版協会)』『J・バーク著、坂井定雄・伊藤力司訳『アルカイダ――ビンラディンと国際テロ・ネットワーク』(2004・講談社)』『D・ファラー著、竹熊誠訳『テロ・マネー――アルカイダの資金ネットワークを追って』(2004・日本経済新聞社)』『B・ルイス著、中山元訳『聖戦と聖ならざるテロリズム――イスラームそして世界の岐路』(2004・紀伊国屋書店)』『J・バーカー著、麻生えりか訳『テロリズム――その論理と実態』(2004・青土社)』

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知恵蔵 「ロンドン同時爆破テロ」の解説

ロンドン同時爆破テロ

2005年7月7日朝のラッシュ時に、ロンドン地下鉄3カ所と2階建てバスが同時に爆破され、自爆犯4人を含め56人の死者と、約700人の負傷者を出した事件。2週間後の21日に2度目のテロが発生した。7月末には2度目の事件の実行犯とされた容疑者4人が全員逮捕された。同年9月1日、中東の衛星テレビ・アルジャジーラが最初のテロで自爆したモハメド・サディク・カーン容疑者とされる男がテロを予告するビデオを放映、ビデオには国際テロ組織アルカイダのナンバー2であるザワヒリ容疑者も映っており、これが犯行声明の映像だとされている。テロは、主要国首脳会議(グレンイーグルズ・サミット)開幕直後に起き、親米外交政策をとるブレア政権に対する脅迫が目的だったとされている。7月22日にはイギリス警察当局の過剰警備の結果、テロ事件とは無関係のブラジル人が誤認で射殺される事件も起こっている。

(渡邊啓貴 駐仏日本大使館公使 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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