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下垂体前葉機能低下症 かすいたいぜんようきのうていかしょうHypopituitarism

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家庭医学館の解説

かすいたいぜんようきのうていかしょう【下垂体前葉機能低下症 Hypopituitarism】

[どんな病気か]
 脳にある下垂体(かすいたい)の前葉(ぜんよう)という部分からは、ホルモンの分泌(ぶんぴつ)をうながすホルモン(ホルモン放出ホルモン)が分泌され、臓器を刺激して、ホルモンを分泌させています。
 甲状腺刺激(こうじょうせんしげき)ホルモン、副腎皮質刺激(ふくじんひしつしげき)ホルモン、性腺刺激(せいせんしげき)ホルモン、および肝臓を刺激してソマトメジン(成長を促進するホルモン)の分泌をうながす成長ホルモンなどのホルモンが、下垂体から分泌されています。
 まとめて下垂体前葉(かすいたいぜんよう)ホルモンと呼ばれる、これらのホルモン放出ホルモンの分泌が低下した状態が下垂体前葉機能低下症です。
 下垂体前葉機能低下症には、1種類だけのホルモン分泌が低下している場合、いくつかのホルモン分泌が低下している場合、すべてのホルモン分泌が低下している場合など、いろいろなタイプがあります。
 また、分泌の低下がわずかなものから、完全にストップしているものまで程度もさまざまです。
 分泌が低下している下垂体前葉ホルモンの種類によって、いろいろなホルモン欠乏の症状が現われます。
 性腺ホルモンの欠乏症状としては、性欲の低下、女性では月経(げっけい)がなくなったり、男性では体型の女性化などがおこります。
 副腎皮質ホルモンの欠乏症状としては、全身のだるさ(倦怠感(けんたいかん))、食欲不振、下痢(げり)、嘔吐(おうと)、空腹時の眠け、発熱などがあります。
 甲状腺ホルモンの欠乏症状としては、寒がり、眠け、緩慢(かんまん)な動作、乾燥した皮膚、まゆ毛の減少などがあります。
[原因]
 下垂体に腫瘍(しゅよう)や炎症があると、下垂体前葉機能低下症(別名シモンズ病)がおこってきます。
 また、分娩のときに大出血をおこしてショック状態におちいった女性が、回復後しばらくたってから、ときには10年以上も後に、下垂体前葉機能低下症をおこすことがあります。
 これを、とくにシーハン病と呼んでいます。
[検査と診断]
 血液中の下垂体前葉ホルモンの測定をします。つぎに、視床下部(ししょうかぶ)ホルモン剤を注射して下垂体前葉を刺激し、血液中の下垂体前葉ホルモンが増えたかどうか、その値を調べます。
 下垂体前葉ホルモンの値が異常に低下しているとか、視床下部ホルモンの刺激を受けて下垂体前葉ホルモンの分泌が増加しなければ、下垂体前葉機能低下症と診断します。
[治療]
 腫瘍が原因の場合は、脳の手術を行なって下垂体の腫瘍を摘出します。また、放射線を照射して腫瘍細胞を消滅させる放射線療法が有効なこともあります。
 原因がそれ以外であったり、腫瘍を摘出する前後には、不足しているホルモンを内服し続けます。
[日常生活の注意]
 生涯、毎日欠かさずホルモンを内服しなければなりません。そうすれば、ふつうの生活がおくれます。

出典|小学館
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

下垂体前葉機能低下症
かすいたいぜんようきのうていかしょう

視床下部あるいは下垂体に生じた腫瘍(しゅよう)、炎症、頭部外傷、出血などの病変の結果、下垂体前葉ホルモンのいずれかの分泌が低下し、後記のホルモン分泌低下症が一つ以上認められる疾患の総称。指定難病。2001年(平成13)の厚生労働省疫学調査によると日本の患者数は約1500名。下垂体前葉ホルモンには、ゴナドトロピン(Gn、性腺(せいせん)(生殖腺)刺激ホルモンともいう。黄体形成ホルモン(LH:luteinizing hormone)と卵胞刺激ホルモン(FSH:follicle-stimulating hormone)の二つがある)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、成長ホルモン(GH)、プロラクチン(PRL)がある。治療としては、原因となった病変を治すとともに、不足しているホルモンを補充する。[大久保昭行]

ゴナドトロピン分泌低下症

ゴナドトロピンは、性腺(卵巣、精巣)に作用して、女性では卵胞の発育、排卵、黄体形成、女性ホルモンの産生を促進し、男性では精巣の発育、精子形成、男性ホルモンの産生を促進する。ゴナドトロピン分泌低下症では、二次性徴の欠如または二次性徴の進行停止、月経異常、性欲低下、不妊、陰毛・腋毛(えきもう)の脱落、性器萎縮(いしゅく)、乳房萎縮、小陰茎、停留精巣、尿道下裂、無嗅(むきゅう)症(カルマンKallmann症候群)などの症状がみられ、血中ゴナドトロピンの低値、血中および尿中の性ステロイドの低値が認められる。無嗅症を伴うカルマン症候群は、ゴナドトロピン放出ホルモンが欠損している疾患で、口唇裂、色覚異常などの症状もみられる。なお薬剤の副作用や、高度肥満、神経性食思(食欲)不振症などによりゴナドトロピン分泌の低下がみられる場合がある。[大久保昭行]

ACTH分泌低下症

ACTHは副腎皮質に作用して、コルチゾールと副腎アンドロゲンの合成を促進する。ACTH分泌低下症では、血中コルチゾールの低値に伴い、全身倦怠(けんたい)感、易疲労性、食欲不振、低血糖や低ナトリウム血症による意識消失、低血圧などの症状がみられる。なおACTHの分泌低下は薬剤の副作用でもみられることがある。[大久保昭行]

TSH分泌低下症

TSHは甲状腺に作用して、甲状腺ホルモンの産生と分泌を促進する。TSH分泌低下症では、血中甲状腺ホルモンの低値に伴い、寒がり、不活発、皮膚の乾燥、徐脈、脱毛、発育障害など甲状腺ホルモン欠乏症状がみられる。なお薬剤の副作用でTSH分泌が低下する場合もある。[大久保昭行]

GH分泌低下症

(1)小児 小児では、身体のバランスはとれているが低身長の成長障害、乳児では、低身長は認められなくても低血糖症状がみられる。頭蓋(とうがい)内疾患や他の下垂体ホルモンの分泌低下がみられる場合もある。
(2)成人 小児期に発症した場合は成長障害が認められる。しかし性腺機能低下症を合併しているときは成長障害を認めないことがある。易疲労感、スタミナ低下、集中力低下、気力低下、うつ状態、性欲低下などの自覚症状や皮膚の乾燥と菲薄(ひはく)化(薄くなること)、内臓脂肪の増加、骨量の低下、筋力低下などの症状がみられる。頭蓋内疾患の合併あるいは既往歴や治療歴、または周産期異常の既往がある場合がある。[大久保昭行]

PRL分泌低下症

産褥(さんじょく)期の乳汁分泌低下と臨床検査によりPRLの分泌低下が認められる。[大久保昭行]

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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