パリ同時多発テロ(読み)ぱりどうじたはつてろ

共同通信ニュース用語解説 「パリ同時多発テロ」の解説

パリ同時多発テロ

2015年11月13日夜、パリ中心部のバタクラン劇場や沿道の飲食店、郊外サンドニのフランス競技場近くなど6カ所でほぼ同時に銃乱射爆発が起き130人が死亡、300人以上が負傷した。過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行を認める声明を出した。実行犯のうち9人は自爆などで死亡。唯一生存者とされるサラ・アブデスラム容疑者ら20人が起訴され、来年に初公判が開かれる見通し。(パリ共同)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「パリ同時多発テロ」の意味・わかりやすい解説

パリ同時多発テロ
ぱりどうじたはつてろ

2015年11月13日夜(日本時間14日)、フランスのパリでほぼ同時刻に多発的に起きたテロ事件。国立競技場のスタッド・ド・フランス周辺、コンサートホール(バタクラン劇場)、バー、レストラン、カフェなどで自爆テロ、銃乱射、人質立てこもり事件などが相次いで発生。死亡者は130人、負傷者は350人以上に達した。首謀者のモロッコ系ベルギー人を中心に、イスラム過激派思想に共鳴したフランスやベルギー国籍の若者が3グループに分かれて犯行に及んだとみられている。イスラム過激派組織イスラミック・ステート(イスラム国、IS)は翌14日に、インターネット上にフランスのシリア空爆への報復であるとする犯行声明を出した。

 事件後、フランス政府は非常事態を宣言し、一時的に国境封鎖、捜査令状なしでの家宅捜査、自宅軟禁、モスク閉鎖などを実施。非常事態宣言は2016年7月まで延長された。フランス国内ではスポーツ大会などが中止あるいは延期され、パリ行き航空便の出発見合わせ、フランス向け旅行の中止などが相次いだ。フランス政府はパリ同時多発テロへの報復としてシリア空爆を強化した。日本、アメリカイギリス、ドイツ、中国政府や、国際連合、主要20か国・地域(G20)首脳会議などがテロを非難し、テロ捜査への協力とテロ防止への連携を確認した。イスラム過激派の犯行とされるヨーロッパでのテロには、2004年3月のマドリード列車爆破テロ(191人死亡)、2005年7月のロンドン同時爆破テロ(56人死亡)、2015年1月のシャルリー・エブド襲撃事件(17人死亡)、2016年3月のベルギー連続テロ(32人死亡)などがある。

[矢野 武 2016年7月19日]

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知恵蔵 「パリ同時多発テロ」の解説

パリ同時多発テロ

フランスの首都パリで、現地時間の2015年11月13日(金)夜9時過ぎに起こった無差別テロ事件。三つのグループに分かれた過激派組織がコンサートホール(バタクラン劇場)やレストラン、カフェを次々と襲撃。銃の乱射や自爆によって、死者130人負傷者350人以上を出した。最大の89人の犠牲者を出したコンサートホールでは、治安部隊との銃撃戦で実行犯1人が射殺され、2人が自爆した。オランド大統領が親善試合を観戦していたサッカー場も狙われたが、容疑者は入場を拒まれ、入口付近で自爆した。
翌日、過激派組織「イスラム国(IS)」が「8人の兄弟が自爆ベルトと銃でフランス首都の標的を正確に攻撃した」「フランスのシリア空爆に対する報復である」という犯行声明を出した。オランド大統領もISの犯行と断定、両院全議員の前で「フランスは戦争状態にある」「ISを倒さなければならない」と演説し、国家非常事態宣言の期間を3カ月に延長した。
フランス捜査当局はベルギー国籍のアブデルハミド・アバウド容疑者を主犯格と定め、18日にアバウド容疑者のパリ市内の潜伏先を制圧し、死亡を確認した。しかし、実行犯の1人は行方が分からず、実行組織の全容解明に至っていない(15年12月25日時点)。過去のイスラム過激派によるテロと違うのは、ベルギー国籍のアバウド容疑者を始め、実行犯の多くが中東・北アフリカからの移民で欧州国籍を持っている点、不特定多数の民間人が集まる警備の薄い場所を標的にした点であり、専門家からは今後のテロ対策、未然防止の困難さが指摘されている。
一方、テロ直後からフランス空軍はISが拠点を置くラッカ(シリア北部)への空爆を再開し、米国やロシアもIS支配地域への空爆を強化した。ドイツも空爆には参加しないものの、偵察機や軍艦などの派遣による後方支援を表明している。日本政府は欧米諸国の連帯を支持する一方、12月初めに約20人のメンバーからなる「国際テロ情報収集ユニット」を外務省に設置し、テロ情報の収集・分析に当たらせている。

(大迫秀樹 フリー編集者/2015年)

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知恵蔵mini 「パリ同時多発テロ」の解説

パリ同時多発テロ

2015年11月13日金曜日(現地時間、以下同)にフランス・パリで同時多発的に起きたテロ事件の総称。三つの犯行グループにより行われたとみられ、まず午後9時20分・30分・53分に、オランド仏大統領がサッカー親善試合を観戦していた国立競技場スタッド・ド・フランス近くで自爆テロが計3件発生。9時25分、パリ東部10区のバーと料理店で銃乱射事件が発生し15人が殺害された。9時32分~36分、同11区のレストランとカフェが襲撃を受け24人が死亡し、9時40分、11区のボルテール大通りのカフェで自爆テロが発生した。同9時40分にはバタクラン劇場で3人の男による銃乱射事件が起こり89人が死亡、犯人は人質を取り立て籠もり、午前0時20分に1人が射殺され2人が自爆した。11月16日時点では、死者132人、負傷者349人となっている。14日、過激派組織「イスラム国(IS)」が、犯行声明をインターネット上に発表した。

(2015-11-17)

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