日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベージノフ」の意味・わかりやすい解説
ベージノフ
べーじのふ
Павел Вежинов/Pavel Vezhinov
(1914―1983)
ブルガリアの作家、脚本作家。本名ニコラ・デルチェフ・グゴフ。都会の生活を諷刺(ふうし)的に描いた短編集『昼と夜』(1942)で才能を示す。第二次世界大戦に報道員として従軍した体験から中編『第二中隊』(1949)を著し、人気をよんだ。長編『岸から遠く』(1958)では革命家の国際派とセクト主義の確執を書く。道義心ある学者と名誉欲に走る甥(おい)を対置させ、愛と疎外を描いた長編『夜、白い馬と』(1975)は、十数か国語に訳され映画や舞台で上演された。ミステリー性をもつ中編『障壁』(1976。邦訳『消えたドロテア』)は、精神障害者で予知能力のある娘と中年の作曲家との風変わりな愛と結末を描いたもので、自ら脚色し、1980年、バルナとモスクワの映画祭で大賞を受け、日本でも上映された。中編『白とかげ』(1977)、諷刺的長編『小さい家族の記録』(1979)、長編『秤(はかり)』(1982)その他で、技術第一主義や教育問題を批判的に扱っているほか、オリンピックのルポルタージュや映画の脚本もある。『バイオリンを持った少年』(1963)ほか少年少女向きのものも多く、探偵小説『跡は残す……』(1954)は版を重ね映画化もされた。ディミトロフ文学賞受賞者。
[真木三三子]
『松永緑弥訳『消えたドロテア』(1997・恒文社)』