『ホモ・アカデミクス』

大学事典 「『ホモ・アカデミクス』」の解説

『ホモ・アカデミクス』

フランスの社会学者ピエール・ブルデュー,P.(Pierre Bourdieu, P.)が1984年に出版した著書のタイトル。政治や経済などの世界から相対的に自律した大学界のさまざまな位置関係を占める教員・研究者集団を意味し,語義の範囲としては大学人と呼ばれるものに近い。アカデミックな大学界に棲息する人類(ホモ・サピエンス)というアイロニカルニュアンスをもつ造語である。ただし,諸個人は質なものとして想定されず,各人の社会的出自・学歴称号などに表出する文化資本や象徴資本のような保有資力と,所属機関・学部学科・職名・専門内容などの到達位置との対応関係が分析され,競争や敵対を伴う大学界の権力空間構造とその矛盾が取り上げられる。本書の出版に至るまでに,研究の着手から約20年の歳月を経たことが記されており,自らが立脚する学問的生産の社会的諸条件を反省的に客体化する困難な作業から,より厳密な大学界の科学的研究を構築することが目指された。訳書は藤原書店(石崎晴己・東松秀雄訳)から1997年に刊行
著者: 大前敦巳

出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報

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